鷹が手放した逸材は「すごい能力の持ち主」 まさかの戦力外も…元コーチが期待する28歳
GG賞7度の飯田哲也氏が分析…鷹コーチ時に指導した上林誠知が中日に
自主トレ真っただ中のプロ野球界。2月1日のキャンプインが近づき、球春の足音が聞こえてきた。このオフは現役ドラフトを含め、実績のある選手の移籍が目立った。専門家が特に注目するのは、2年連続最下位からの浮上を期し、前巨人・中田翔内野手らを補強した中日だ。
現役時代にゴールデン・グラブ賞を7度も受賞し、外野守備の名手として鳴らした野球評論家・飯田哲也氏の“イチオシ”は、ソフトバンクから戦力外通告を受け、中日に入団した上林誠知外野手だ。「ここ数年は故障続きで成績が上がっていませんが、すごい能力の持ち主。侍ジャパンに選ばれたこともあり(2017年の第1回アジアプロ野球チャンピオンシップ)、まだ28歳。本人は戦力外になると思っていなかったのではないでしょうか。悔しさを今年にぶつけてほしいと思います」とエールを送る。
「僕は上林がプロ初本塁打を満塁弾で飾るのを、この目で見ていますから」と飯田氏。ソフトバンクの1軍外野守備走塁コーチを務めていた2015年、当時高卒2年目の上林は8月25日のロッテ戦(ヤフードーム=現PayPayドーム)で、3回にプロ初安打、6回に逆転満塁弾を放った。もともと劇的な活躍を演じる“運”を持っている選手だったのだ。2018年には全143試合に出場して打率.270、キャリアハイの22本塁打62打点をマークしている。
守っても強肩で足も速く、広いバンテリンドームに合いそう。飯田氏は「ホークスでは柳田(悠岐外野手)、近藤(健介外野手)で外野のポジションが2つ埋まり、残りの1つにも牧原(大成内野手)、周東(佑京内野手)といった強力なライバルがいて、出場機会が減っていました。上林はある程度試合に出続けることによって結果を残すタイプの選手です。今年はおそらく最初にチャンスをもらえると思うので、早めに結果を出しレギュラーの座を固めることが重要になるでしょう」と活躍のポイントをあげた。
最注目新人はDeNA・度会「最初打てなくても使い続けてほしい」
中日は上林の他にも、主軸を任せられる中田、41歳の前巨人・中島宏之内野手、メジャー通算40本塁打の新外国人アレックス・ディッカーソン外野手らを次々補強。昨季リーグワーストのチーム打率.234、390得点、71本塁打に終わった打線の強化にめどが立った。
もともと投手陣は強力で、昨年もリーグ2位のチーム防御率3.08をマークしているだけに、今季一気に順位を上げる可能性もありそうだ。飯田氏も「セ・リーグは昨年日本一の阪神が、今年も頭一つ抜けていると思いますが、中日も強そう。期待株です」と頷いた。
一方、新人の中で飯田氏が最も注目するのは、DeNAのドラフト1位・度会隆輝外野手(ENEOS)。現役時代にヤクルトでチームメートだった度会博文氏(現ヤクルトスワローズベースボールアカデミー・ヘッドコーチ)の次男でもある。
2022年の都市対抗で4本塁打、打率.429をマークし、MVPに相当する橋戸賞に輝いた打撃は折り紙付き。さらに昨年11月、ファンフェスタの新入団選手紹介のコーナーで人気アニメ「ワンピース」の主題歌を熱唱するなど、早くもファンのハートをつかんでいる。
飯田氏は「明るいキャラクターで、ベイスターズの雰囲気にも合っていると思います。課題はプロの150キロを超える速球に、どう対応するか。シュアな打者で対応力はあると思うので、仮に最初打てなくても焦らないでほしい。首脳陣には開幕前に『1年間は使い続ける』と宣言してほしいくらいです」と提言する。
新人選手や新外国人選手、移籍選手の“0から這い上がろう”とする執念が、今年も球界を盛り上げそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)