塾通いも野球も本気…ニーズ合致で選手増 “諦めさせない”「参加自由」の選択肢

BIGベースボールクラブの運営幹部を務める上野啓輔氏(左端)【写真:高橋幸司】
BIGベースボールクラブの運営幹部を務める上野啓輔氏(左端)【写真:高橋幸司】

元燕投手の上野啓輔氏運営…他の習い事も両立可能な「BIGベースボールクラブ」

 地域のニーズに合った“地域密着型”運営で、入団希望者を増やしている小学生野球チームがある。東京都中央区・江東区を中心に活動する「BIGベースボールクラブ」だ。運営幹部を務める元ヤクルト投手の上野啓輔さんは、選手・保護者の新たな選択肢を提供することで、好きな野球を途中で断念させない環境を作っている。

 上野さんは大学中退後に渡米し、独立リーグやレンジャーズ傘下マイナーでプレー。帰国後は四国リーグ・香川を経て、2010年ドラフトでヤクルトから育成2位指名を受け、2年間選手生活を送った。現役引退後、1年間の不動産会社勤務を経て「株式会社 FROM BASE.」を設立。子どもたちへの野球指導に加えて、MLBパイレーツのゲストコーチや、大学コーチ、カナダ独立リーグのスカウトなど多岐にわたって活動を行っている。

 BIGベースボールクラブ設立のきっかけは、自身の米国での経験が大きいと語る。「米国のマイナーリーグや独立リーグでは、シーズン中も野球教室や施設訪問を積極的に行うなど、地元の人たちと交流を深める地域貢献活動が多いんです。現役を終えた後、日本でも同じように、地域の子どもたちが野球を始めるきっかけ作りができないか、という思いがありました」。

 初めは幼稚園児を対象とした課外教室から。その後、小学校低学年の初心者対象のスクールを立ち上げ指導を続けていくうちに、「4年生以降も野球を続けられるチームがないか」との保護者からの問い合わせ増えたことから、2019年にBIGベースボールクラブをスタートさせた。

 現在は40人ほどが所属し、昨年になり「結構増えました」と上野さん。その要因として、地域のニーズと合致している点が大きいと語る。

 というのも、チームが活動する中央区や江東区は、中学受験に挑む小学生の割合が非常に高く、5年生以降になると塾通いのため、他の習い事が難しくなる子が多いという。とはいえ、その中でも野球を続けたい子どもや保護者は、もちろんいる。BIGベースボールクラブの活動日は基本的に毎週末1回で、受験勉強や他の習い事のための欠席や途中参加、途中退出も可能としている。この「参加自由型」スタイルが、地域の親子の要望とマッチしているのだ。

BIGベースボールクラブの練習の様子【写真:高橋幸司】
BIGベースボールクラブの練習の様子【写真:高橋幸司】

連盟に無所属の理由「保護者の負担が増えてニーズに合わなくなる」

 また、BIGベースボールクラブは少年野球連盟や軟式連盟に所属をしていない。その理由も“土地柄”との関係にあると上野さんは明かす。

「もちろん、所属していた方が緊張感のある大会を多く経験できるメリットはあるのですが、自分たちが参加していない試合に審判を出す必要があるなど、保護者の負担も増えてしまいます。それは、この地域のニーズに合わない。連盟所属でなくても出られる大会は増えていますし、それで年間3、4大会ほど出られればスケジュール的には十分だと感じています」

 練習の出欠はアプリで集約。毎週来る子も来られない子も、練習は同じようにするし、練習試合になれば全員出場が基本だ。たまにしか顔を出さないから試合に出られない、ということもない。

 それでも、単に“公園に集まって遊ぶ”レベルの野球では決してない。日米球界で戦ってきた上野さんの指導のもと、楽しみながらも真剣に技術を学び、チームプレーを習得しようとする様子は、練習や試合からも伝わってくる。保護者も練習を見守るか、手伝うかは一任しているが、「積極的に手伝ってくださる方が多くてありがたいです。やはり協力がなければ運営は難しいですから」と上野さんは感謝する。

 野球にとことんのめり込み勝利を求めていくのか、それとも野球以外の時間も両立させていくのか。「何が良いか、悪いかではなく、こういうチームも1つの選択肢として、あっていいと思います」と上野さん。子どもたちに野球を“諦めさせない”環境作りは、昨今の野球人口減少への対策としても、大いに参考になるはずだ。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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