巨人21歳が上げた“悲鳴”「限界突破です」 ゴジラ、岡本に続くか…阿部監督の狙い
秋広は“悲鳴”「限界どころではない、限界突破です」
巨人・阿部慎之助監督が宮崎キャンプで、21歳の秋広優人内野手にロックオン。身長2メートル、体重110キロの“メジャーサイズ”でキャンプインした成長株を中軸に育て上げることが、新指揮官の使命の1つになりそうだ。
昨年秋に見た“地獄絵図”が繰り返された。雨に見舞われた3日午後、室内練習場で秋広に課せられたのは過酷な“股割りティー打撃”だった。阿部監督はまず秋広に、両足を大きく広げた体勢で地面ギリギリの低いボールを打たせ、その後フィニッシュの姿勢のまま静止を命じた。
足がプルプル震える中、阿部監督はカウントダウンを始めたが、「5秒前!」と言った後、「10!」となって、秋広は「なんで?」と悲鳴を上げた。さらに「5、4、3、2、2、2」と一向に数字が減らず、秋広が「あ~!」と叫びながら倒れ込む一幕もあった。
秋広は阿部監督の就任直後、昨年11月の宮崎秋季キャンプでもマンツーマンで鍛えられていた。重りを担ぎ腰を落とした姿勢をキープ。阿部監督のカウントダウンはここでも「5、4、3、4、5、6」、「2、1、ゼッ、ゼッ、ゼッ」といつまでたっても「0」にならなかった。
秋広は「秋季キャンプ以来ですね。宮崎に来たな、という感じがします。いずれ来るだろうと思っていました。とうとう来たなという感じです。左太ももが一番やばいです。限界どころではない。限界突破です」と苦笑した。
秋広の潜在能力は誰が見ても破格だ。身長は昨年も他の選手より頭1つ分抜きん出た印象だったが、シーズンオフに中日へ移籍した中田翔内野手との自主トレで、食事とトレーニングにより約10キロの増量に成功。このキャンプでは、たくましい肉体が目を引く。「これを維持できるように頑張りたい」とうなずく。パワーアップは数値にも表れていて、「昨年10割の力で打ってた打球を、7~8割で打てる感覚がある」と確かな手応えを感じているところだ。
ミスターはゴジラ、原前監督は坂本、高橋由伸元監督は岡本和を育てた
この日、キャンプを視察した山口寿一オーナーも「体がまたひと回り大きくなりましたね。去年あれだけ活躍して、今年さらに飛躍してほしい選手の1人。外野手としてスタートを切ると思いますが、一角を占めて、打順においてもいい位置を期待したい。ぜひ頑張ってほしい」と秋広に夢を描いている。
昨年ブレークし121試合出場、打率.273、10本塁打41打点をマークしたが、規定打席にはわずか4打席足りず、レギュラーの座を固め切れなかった。昨年は一塁手としても18試合のスタメン出場があったが、今年は阿部監督が基本的に主将の岡本和真内野手を一塁に固定する構想で、秋広は外野で定位置確保を狙うことになりそうだ。増量はしても守備では「出力が上がっていて、体の重さは感じません」と頼もしい。
「監督直々に練習に付き合ってもらえることは、喜ばしいことだと思います。食らいついていきたいと思います」
かつて長嶋茂雄元監督は松井秀喜氏をマンツーマン指導で鍛え上げ、原辰徳前監督は坂本勇人内野手をレギュラー遊撃手に抜擢して育て、高橋由伸元監督は岡本和真内野手を4番に固定して責任感を植え付けた。歴代スターに劣らぬ素質を感じさせる秋広は、阿部監督の下でどんな“完成形”を見せてくれるだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)