巨人の“逸材”候補に「ゆくゆくはトリプルスリーを」 担当スカウトが語る魅力

キャンプでシート打撃を行う巨人・佐々木俊輔【写真:宮脇広久】
キャンプでシート打撃を行う巨人・佐々木俊輔【写真:宮脇広久】

シート打撃ではヒット性の当たりを阻まれ4打数無安打1四球

 巨人のドラフト3位ルーキー・佐々木俊輔外野手(日立製作所)が、いよいよ本格的に躍動を始めた。キャンプイン早々、精密機器で測定した打球速度が170キロを超えたことで話題になったが、第1クール(1〜4日)の天気は全日雨で、練習は専ら室内だった。6日の第2クール開始とともに宮崎に青空が戻り、今キャンプ初の屋外フリー打撃では3本の柵越え。7日には実戦形式のシート打撃に参加した。

 出端をくじかれた。佐々木は各打者がカウント1-1から始まるシート打撃の1打席目に、ドラフト2位の左腕・森田駿哉投手(Honda鈴鹿)と対戦。いきなり初球をとらえ、中前へ抜けそうな痛烈なゴロを放ったが、遊撃を守っていた門脇誠内野手のスライディングキャッチに阻まれ、一塁でアウトになった。結局4打数無安打1四球に終わった。

 それでも、阿部慎之助監督が「『獲ってよかった』と今ちょっと思っています。実際に活躍してもらってから言いたいな」とほれ込んだ通り、身長174センチの小柄なイメージとは裏腹に、パワフルな打撃は魅力いっぱいだ。

 その佐々木を担当スカウトとして昨年1年間追いかけたのは、今年2年ぶりに現場へ復帰した実松一成1軍バッテリーコーチだ。同コーチは「もともと打撃に関しては、逆方向に飛ばす能力やコンタクト能力が非常に高かった」と技術的な特長を挙げ、「守備を含めて、全体的に野性的な選手です。本能でプレーする感じで、体も強い。すごく魅力を感じた選手でした」と評する。

 ようやく晴天の下でグラウンドを駆け回れるようになった今から、いよいよ佐々木の“野性”が発揮されるのかもしれない。実松コーチは「このままアピールしてくれればいい。なかなか難しいとは思いますが、ゆくゆくはトリプルスリーを狙えるような選手になってほしいと思います」と述懐する。

日立製作所時代は1番・中堅が主、阿部監督には“5番”構想も

 センターのレギュラー候補にも挙げられており、となると、打順の適性も気になるところだ。昨年日立製作所では「1番・中堅」が多かったが、一方で打順は2番や3番、守備位置は左翼も右翼もこなした。一方、阿部監督は“5番候補”であることも示唆している。

 佐々木自身は「これから実戦が始まって、もしスタメンで使っていただけたら、置かれた打順で役割がはっきりすると思うので、その役割にしっかり応えられる打者になりたいです」と殊勝に語る。走力、パンチ力、コンタクト力を兼ね備えた佐々木のどこにフォーカスするかで、打順の考え方は変わりそうだ。

 一方、「おさるのジョージ」にちなんだニックネームの「ジョージ」を自らアピールし、チームメートの間に浸透中。このキャンプ中にファンから「ジョージ!」と声をかけられることも増え、知名度は俄然上がっている。「うれしいです」と口元を綻ばせる。

 東京・帝京高、東洋大、日立製作所を経てプロ入り。帝京高野球部出身といえば、とんねるずの石橋貴明さんをはじめ、森本稀哲外野守備コーチ、元日本ハムの杉谷拳士氏、DeNA・山崎康晃投手ら、非常にユニークで“キャラが立った”選手が多い印象だ。佐々木は「皆さんは帝京がすごく強かった時代の選手ですし、一緒にするのはおこがましいです」と恐縮するが、その系譜に連なる選手と言えるかもしれない。

 自身の高校時代は甲子園出場を果たせなかったが、名将・前田三夫氏(現在は同校名誉監督)の薫陶を3年間受けた。「今でも電話で前田監督の声を聞くと、背筋がピンと伸びます」と笑う。

 巨人のユニホームはホーム用、ビジター用ともに背中にネームがなく、新入団選手を判別しにくいケースもあるが、佐々木は背番号「44」を見ただけで誰もがわかる選手になりつつある。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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