くすぶる大砲に「お前何してんの」 DeNAからトレード移籍…低迷期のオリに感じた予兆
2018年にトレードでオリックスに加入した元内野手の白崎浩之氏
今季リーグ4連覇と日本一奪還を目指すオリックスにはすっかり王者の風格が漂うが、2020年までは6年連続Bクラスと苦しんできた。突如として頂点にのぼりつめた印象もあるが、低迷しているころから飛躍の土台は築かれていたという。2018年にトレードでDeNAから加入し、3年間プレーした元内野手の白崎浩之氏は「このチームは強くなる」と確信していた。
駒大から2012年ドラフト1位でDeNAに入団。5年間在籍した後、リーグを移った。オリックスとの2対2の交換トレードに「『DeNAとしてはいらないんだろうな』と、クビみたいな捉え方をしていました。それと同時に、ドラフト1位で期待をして獲ってもらったのに、思うような活躍ができず申し訳ないと思いました」と当時を振り返る。
新天地では心機一転、ルーキーの気持ちでプレーした。同学年の西勇輝投手(現阪神)、伏見寅威捕手(現日本ハム)、西野真弘内野手らから気にかけてもらい、すぐにチームに馴染むことができた。2019年に2軍監督に就任した中嶋聡氏(現1軍監督)には「たくさんのことを学んだ」と感謝する。
「距離感がフランクで、めちゃくちゃ仲良くさせてもらうんですけど、『ダメ』ということはちゃんと『ダメ』と言ってくれるので動きやすい。作戦でも、やろうとしてできなかったのか、そもそも考えていなかったのか。たとえ『ダメ』なことをしてしまっても『もういらない』ということはしない。その後、どう行動するのかちゃんと見てくれていました。こういうやり方をすれば、チームは円滑にいくんだなというのを、肌で感じました」
20年にオリ戦力外、22年に引退…第2の人生はアカデミーコーチ
白崎がオリックスに移籍したのは28歳のシーズン。チームの中では年下の方が多い状況だったが「それでも(首脳陣は)言うところはしっかり言ってくれたし、一歩踏み込んだところまでちゃんと伝えてくれた。チームとしても締まり、後輩たちもそれを見て『しっかりやらなきゃ』と感じ取っていたと思います」
オリックスでの3年間は2軍暮らしが長かったが、ともにプレーするチームメートの能力の高さを感じた。そのひとりが、1学年下の杉本裕太郎外野手。大学時代に対戦経験もあり、当時から体が大きく、飛距離の出る大砲だった。「力があるのにずっとファームにいるから『お前何してんの』って言ったんですよ(笑)。(きっかけひとつで)変わるんだなと思いました」。2021年に本塁打王を獲得、チームの顔となった今の姿に目を細める。
白崎氏は2020年限りでオリックスを戦力外となり、独立リーグでのプレーをへて2022年に現役を引退。2023年から西武のライオンズベースボールアカデミーでコーチを務めている。指導する小学生たちに対しては、会話を大切にするように心がけている。選手の能力を引き出す”ナカジマジック”に間近で触れた経験は、第2の人生に役立っている。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)