打率1割も…ロッテが「進化する」ための台頭 専門家が指摘した“元陸上部”の存在
昨季チーム防御率5位、打率4位でも順位は2位「全員でなんとかする」
今季のパ・リーグは3連覇中の王者オリックスからエースの山本由伸投手(現ドジャース)らが抜け、混戦が予想されている。その中で不気味な存在感を放っているのが、昨季2位のロッテだ。現役時代にゴールデン・グラブ賞7度の名外野手として活躍した野球評論家・飯田哲也氏がキーマンを指名した。
「ロッテは本当に不思議なチームです」と飯田氏が首をひねる。というのも、昨季チーム防御率はリーグ5位の3.40で、チーム打率.239と総得点505もリーグ4位の“Bクラス”だった。それでいて順位は、ソフトバンクとの激しい2位争いをわずか1毛差で制した。
「打線の軸となる選手と言っても、本塁打王のタイトルを獲得した(グレゴリー・)ポランコ(外野手)くらいで、目立った成績を残した選手がいませんでした。投手陣も、佐々木朗希(投手)が圧倒的なポテンシャルを見せたとはいえ、シーズンを通して活躍することはできなかった」と指摘。「ここ数年、全員でなんとかしようという野球がスタイルになっています」と評する。
こういうチームは混戦の中でこそ強さを発揮する。飯田氏は、ロッテに2005年以来19年ぶりのリーグ優勝(2010年には3位から短期決戦を勝ち上がり日本一)の可能性をもたらす投打のキーマンとして、佐々木と和田康士朗外野手の名前を挙げる。
佐々木は言うまでもなく、昨季も15試合登板、投球回91(規定投球回は143)で7勝4敗、防御率1.78をマーク。この調子で1年間を通して投げ続けることができれば、絶大な牽引力となりそうだ。
一方の和田については「とにかく足が速いのが魅力。外野手として守備範囲も広い。彼が1番に定着するようなら、いい意味でロッテの野球が進化すると思います」と見ている。
高校時代は野球部でなく陸上部に所属していた和田は、球界屈指の俊足を誇り、2021年にはスタメン出場はわずか2試合ながら、24盗塁を成功させタイトルを獲得した。昨季もチームトップの20盗塁。課題の打撃でも、7月までは打率.175と振るわなかったが、8月以降は.390(41打数16安打)と猛打を振るい、成長のあとを見せた。スタメン出場も年間27試合に上った。
今季オープン戦では5試合3盗塁も打率は.100
和田は13日に本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた阪神とのオープン戦で、7回先頭で中前打を放った山口航輝外野手の代走として出場し、2死後に二盗成功。ただ、9回2死走者なしで迎えた唯一の打席は3球三振に倒れた。今年のオープン戦成績は同日現在、5試合で3盗塁をマークするも、打率.100(10打数1安打)にとどまっている。レギュラー獲得には厳しい戦いが続いている。
それにしても今年のパ・リーグは、飯田氏が「どのチームにも決め手がなく、どこが優勝するかわからない。評論家泣かせの年です」と嘆くほど。3連覇中のオリックスからは、エースで昨季チーム最多の16勝をマークした山本と、同2位の11勝を挙げた山崎福也投手(現日本ハム)がそろって流出した。「昨季新人王の山下舜平大(投手)や東(晃平投手=昨季6勝)の成長が期待されますが、2人ともシーズンを通して活躍した経験はなく、未知数と言えば未知数です」と指摘する。
ソフトバンクは山川穂高内野手を西武からFAで、アダム・ウォーカー外野手を巨人からトレードで獲得し、打線の破壊力が増したが、先発投手陣に不安を抱えているとみられる。
「不思議なチーム」と恐れられるロッテが“乱世”を制する可能性も十分ありそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)