ノーノー達成や開幕投手…内野手に“転向”も 甲子園盛り上げた選抜優勝投手の現在地
ソフトバンク・東浜は2008年に沖縄尚学を9年ぶり2度目の頂点に導く
春の選抜高校野球大会(選抜)が18日に開幕した。パ・リーグには優勝を果たした瞬間、マウンドに立っていた優勝投手が3人いる。一大会に1人しかいない選抜優勝投手の勲章を持つ3人の選手たちの現在地を確認する。
ソフトバンクの東浜巨投手は、2008年に沖縄尚学で甲子園優勝を経験。初戦の聖光学院高校戦で自己最速の147キロを投げ、完封勝利。準々決勝は中継ぎでマウンドに上がり、膝に打球が直撃するというアクシデントに見舞われるが、翌日の準決勝では2失点完投勝利を飾った。決勝の聖望学園戦でも完封勝利。9年ぶり2度目の頂点に輝き、紫紺の優勝旗を沖縄に持ち帰った。
卒業後、亜細亜大学へ入学すると、通算22完封のリーグ記録を達成。その活躍が認められ、3球団競合の末にソフトバンクに入団した。2016年にローテーションに定着すると、翌2017年、最多勝に輝くなど日本一に貢献。2019年に怪我で離脱するも、長年ホークスの屋台骨としてチームを支え、2022年にはノーヒットノーランを達成した。
昨季は17試合に投げ防御率4.52、6勝7敗。例年通りの成績は残せなかった。来季は34歳となるが、老け込むにはまだ早い。今季はベテランでありながら鷹の先発ローテーションを支えるフル回転が求められる立場。アクシデントに見舞われてもめげない不屈のメンタルで復活を遂げたい。
西武・平沼はプロ入り後に野手に専念、ロッテの小島は今季の開幕投手に
西武の平沼翔太投手は敦賀気比で2015年春に優勝した。2014年の夏の甲子園では2年生ながら3試合で完投勝利し、ベスト4進出に貢献。2015年の選抜では全試合に「4番・投手」で出場。1回戦は1安打完封勝利、準々決勝では自ら本塁打を放ち投打でチームを牽引。準決勝では、前年度夏の甲子園で敗れた大阪桐蔭を完封し、決勝は雨という難しいコンディションの中で、1失点完投し、福井県勢初優勝を飾った。
2015年ドラフト会議で内野手として日本ハムにドラフト4位で指名。当時の監督である栗山英樹氏からは「二刀流」も期待されていた。2年目にはプロ初安打を放ち、翌年に自己最多の73試合に出場するもレギュラーは奪えず。2021年夏に西武にトレードで移籍し、2023年はキャリアで2番目の67試合に出場。苦しい状況は続くも、強豪校相手にリベンジを果たしたあの春のように大きく飛躍し、移籍4年目のシーズンで地位を確立したい。
ロッテの小島和哉投手は浦和学院で2013年春に優勝を果たした。1年夏から甲子園に出場。秋からエースナンバーを背負った。秋の関東大会では西武・高橋光成投手擁する前橋育英、オリックス・若月健矢選手擁する花咲徳栄を破って優勝を果たし、選抜出場を決める。
1回戦は完封勝利を挙げると、準々決勝は7回を1安打に抑えてみせた。決勝は8安打を浴びるも9回1失点の粘投で2年生ながら優勝投手に輝く。この大会は3完投し、42回3失点と圧倒的な成績を残した。
卒業後は早大に進学し、2018年のドラフト3位でロッテに入団。ルーキーイヤーから先発で経験を積みプロ初勝利をつかむと、2年目の2020年から先発ローテーションに定着している。吉井理人監督からの信頼も厚く、今年は2年連続となる開幕のマウンドを託される予定だ。
特別な選手が多くいたとしても勝ち続けるのは至難の業。そんなトーナメントを勝ち上がり、チームで優勝を果たした栄光は、時に重荷になるかもしれない。そんなプレッシャーを乗り越え、聖地で見せたあの春以上の輝きを見せられるか――。今回紹介した3人はいずれも飛びぬけた成績で甲子園を制した。今は各々抱える事情や立場は異なるが、高校時代に見せた才能をいかんなく発揮し、さらに大きな栄光をつかみたい。春の頂点に輝いた男たちに注目だ。
(「パ・リーグ インサイト」山岡雄一郎)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)