ダルビッシュが見せた素顔「寂しい」 12歳下の右腕を救った助言…大晦日に送った1通の連絡
オリックス・宇田川「本当に居心地の良い空間でした」
先輩の勇姿をじっくりと目に焼き付けた。オリックスの宇田川優希投手は、20日のドジャース戦(高尺スカイドーム)で2年ぶり4度目の開幕投手を務めたパドレス・ダルビッシュ有投手に感謝を伝えきれない。2人は昨春に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で初めて出会い、悲願の世界一まで駆け上がった。
歓喜の祝杯をあげた夜、ダルビッシュは後輩投手陣の数人をホテルの自室に呼んだ。宇田川も声をかけてもらい「WBCの最終日、世界一になってダルさんの部屋で思い出話をさせて頂きました。(期間中)ダルさんがいることで、本当に居心地の良い空間でした。最後の夜に『次、会えるのはいつだろう……』と考えて、凄く寂しくなりました」としみじみと振り返る。
嬉しかった“返事”がある。「ダルさんも寂しいと言ってくれたんです。『アメリカに遊びにおいでよ!』と言ってくださいました。どれだけ野球を必死にやっていても、一生で1回会えるかどうかもわからない方。一緒に野球できることも、本当は絶対にない。だから初めて目の前に来られた時はヤバかったですね……」。バクバクの胸中を思い出した。
「ダルさんを初めて見たのはチームバスの中です。乗った時に、もう座っておられて『本物だ……』となりました。WBCでは(他のメンバーと)年齢は離れていましたけど、関係なかった。自分から距離を縮めようと考えてくれていた。だから、すぐに良い雰囲気になりました」
ダルビッシュから「そういうのもあるんだ、良いね!」
夢のような時間で、最初は信じられなかった。「ダルさんクラスになるとレベルが違うじゃないですか? 発想も成績も実力も全然違う。だけど、同じ目線で話してくださるんです」。ニコリと笑って、白い歯を見せる。「アドバイスもくださるんですけど、僕のやっている練習に興味を持って『そういうのもあるんだ、良いね!』という感じで言ってくださいました」。あの声が、また聞きたい。
昨年大晦日、勇気を出して1通のLINEを送った。「本当に1年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いします」と送ると「いつでもLINEしておいでよ!」と返事が来た。思わぬ返答に、頬は緩んだ。
その次のLINEは今年2月。突然、ダルビッシュから届いた。「宮崎キャンプで肩のコンディション不良の記事が出た時に、ダルさんからLINEが来ました。丁寧に練習メニューを教えてくださいました……」。12歳上の先輩が見せた優しさに、目頭が熱くなった。
「また頑張ってダルさんに会えるように、と思って頑張っています」。直接、目を見てお礼を言いたい。
(真柴健 / Ken Mashiba)