離れた選手の心「真逆のことやってた」 鎧脱いで聖地8度…監督36年で得た学び
新潟明訓で春夏8度の甲子園…佐藤和也さんの選手とのコミュニケーション術
甲子園を目指す過程で、指導者も時代の変容に合わせて変わらなければ、選手の心も離れていってしまう。新潟明訓を春夏8度の甲子園に導いた佐藤和也さん(新潟医療福祉大野球部総監督)も、指導者を始めた頃は「鎧を着ていた」という。Full-Countでは「甲子園球児の育ち方・育て方」をテーマに、甲子園へ導いた元監督や選手、その保護者にインタビュー。夢を叶えるために、それぞれの立場で実践できる“成長のヒント”を探った。
1984年から新潟明訓の監督となった佐藤さんは、1991年夏、エースの小林幹英投手(元広島)を軸に同校を初の甲子園へと導いた。しかし、当時の指導は自身から“一方的”に行うもの。「選手から私には聞きづらかったと思います」と振り返る。
「決して威張ろうという訳ではなく、選手からの信頼を得たかったんです。信頼っていうのは『構築する』とか『作り上げる』というような言葉で表されるじゃないですか。信頼を構築するつもりが、知らず知らずのうちに、鎧を着ていました」
自身がフル装備で向かっていけば、相手も心をオープンにすることは難しい。ある時、「選手があんまり話してくれないな」と感じたという。
「真逆のことをやっていたんです。鎧を脱いだ方が、信頼を得ることができるということに気づきました」
高校・大学で36年間で得た“武器”「見えないふり、聞こえないふり」
それからは選手との距離を詰めることを意識した。廊下で選手とすれ違えば、まずは笑わせることに努め、気持ちをリラックスさせたところで本音を引き出したり、トイレで隣に並び、用を足しながら“ミーティング”を行ったりするなど、「鎧を脱いで信頼を得ていく」作業を行った。
「笑顔の中で心を柔らかくして選手と話していくことの大切さを学びました。円陣を組んで、直立不動で硬直する選手に『お前らな~!』と怒鳴るようなことは、かなり早くに卒業したと思います」
それと比例するようにチームの成績も上がり、平成の期間だけで8度の甲子園出場を果たすなど、新潟屈指の強豪校へと成長。2012年夏限りで29年間務めた監督を退任し、翌2013年からは新潟医療福祉大で7年間指揮を執った。酸いも甘いも噛み分けてきた67歳の武器は「見えないふり、聞こえないふりをする」ことだという。
「我々のような年寄りが選手を育てる時の大きな武器は、そこにあるんですよ。しっかりガンガンやっていくと、悪いところは取れていくかもしれないが、良いところも取れていくんです。自分から考えてやることまで取れてしまった子は、そこから先には行かないです」
高校、大学合わせて36年もの監督生活を経験してきたからこそ、たどり着くことのできた境地だと言える。佐藤さんは4月1日からの「甲子園予備校」に参加予定。その含蓄のある言葉は、これから甲子園を目指す小・中学生のみならず、指導者たちも道標となるはずだ。
新潟明訓高監督として甲子園8度、佐藤和也さんも“参戦決定”!
Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、4月1日(月)から5夜連続(午後8時から)で、オンラインイベント「甲子園予備校」を開催します。甲子園出場経験のある監督、選手と保護者がYouTubeライブに登場。指導方法や練習方法、日頃の生活習慣など、自身の経験を基に、夢や目標を叶えるための対策や準備についてヒントを授けます。参加費は無料。詳細は以下のページまで。
【甲子園予備校・詳細】
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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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