“恐怖の臨時代走”も「凄くラッキー」 会心の二盗阻止…大阪桐蔭を沈めた捕手の思考
1点差に迫られた直後…臨時代走に俊足の1番打者・境が入った
第96回選抜高校野球大会は28日、甲子園球場で準々決勝4試合が行われ、第4試合では報徳学園(兵庫)が大阪桐蔭に4-1で勝利した。1点差に迫られた8回には、大阪桐蔭の“俊足”境亮陽外野手(3年)が一塁に臨時代走で登場。場内はざわついたが、徳田拓朗捕手(3年)は「凄くラッキー」と落ち着いていた。
境は27日の2回戦でランニング本塁打を放つなど、50メートル走は5.8秒の俊足。この日も2点を追う8回に2死から右翼線へ鋭い当たりを放つと、快足を飛ばして三塁に到達。場内も騒然となった。
あっという間にチャンスを演出し、吉田翔輝外野手(3年)の適時打に繋げたが、吉田は直後、牽制時に腕を痛めてベンチへ。すると、生還したばかりの境が一塁走者として塁上に“復活”した。
報徳学園としてはたまったものではないが、捕手の徳田は冷静だった。「僕からしたら凄くラッキー。(吉田くんより)境くんの方が走ってくる可能性が高いと思っていた。そこでしっかり(投げる)準備ができた」。
2度牽制を入れ、4球目に境がスタート。「握り替えは大事にしながら、しっかりとライン上に投げることを意識しました」。二塁に境を進ませれば、一打同点のピンチとなるが、ベース上に正確に送球し、ギリギリのタイミングでアウトを奪った。
ド派手なガッツポーズも飛び出し、反撃を許さなかった。その裏の攻撃では2点を追加。まさに流れを引き寄せたプレーだった。リード面では、今朝丸裕喜投手(3年)を導き、大阪桐蔭を1得点に封じ込んだ。「徳丸くん、ラマルくんにはインコースを攻めて、終盤ぐちゃぐちゃにするというプランで考えていました」。昨年は堀柊那捕手(現オリックス)が投手陣を引っ張って選抜準優勝に導いたが、今年も頼もしい捕手がどっしりと座っている。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)