“酒飲んで寝てる監督”でも「あれが理想」 部屋には全巻…聖地8度、心掛けた寛容

佐藤和也氏がプロへ導いた、左から笠原祥太郎(DeNA時代)、漆原大晟、桐敷拓馬(共に阪神)
佐藤和也氏がプロへ導いた、左から笠原祥太郎(DeNA時代)、漆原大晟、桐敷拓馬(共に阪神)

新潟明訓で8度の甲子園…佐藤和也氏は『ドカベン』参考に“多様性”を尊重

 チーム作りの理想は、自身が指揮する高校がモデルとなった野球漫画にあった。新潟明訓を春夏8度の甲子園に導いた佐藤和也さん(新潟医療福祉大野球部総監督)は、選手それぞれの個性を尊重する指導が「自分の考え方の真ん中にあった」という。Full-Countでは「甲子園球児の育ち方・育て方」をテーマに、甲子園へ導いた元監督や選手、その保護者にインタビュー。夢を叶えるために、それぞれの立場で実践できる“成長のヒント”を探った。

 野球漫画「ドカベン」では、主人公・山田太郎や、「悪球打ち」の岩鬼正美、奇想天外な打法で放つ「秘打」が代名詞の殿馬一人ら、明訓高校の超個性的なキャラクターが活躍した。その明訓高校のモデルが、新潟明訓であることは有名な話だ。

 1991年、監督として同校を初の甲子園へと導いた佐藤さんは、「ドカベン」の作者である水島新司さんからプレゼントされた単行本全巻を監督室に置き、時間がある時に読んでいた。

「自分が目指していたのは、今でいうダイバーシティ(多様性)の尊重です。『ドカベン』は、色々な個性をそれぞれが尊重しながら、野球以外では結構ぶつかったりしているんですけど、試合になるとストライクを打たない中心打者や、“秘打”をやる2番打者がいたり……。個性を殺さず、それぞれのいいところを上手に出し合って全国制覇していくじゃないですか。徳川(家康)監督は昼間から酒を飲んで寝ているだけ(笑)。でもあれが理想だなと。自分が引っ張られていたのは、この野球だったような気がします」

新潟明訓高前監督で、新潟医療福祉大野球部総監督の佐藤和也氏【写真:本人提供】
新潟明訓高前監督で、新潟医療福祉大野球部総監督の佐藤和也氏【写真:本人提供】

大学生指導のコツは「その選手の旬を見抜いてあげること」

 長所も短所も、全て寛容に受け止めてきた一方で、時には社会に出ても通用する人間となるように「我慢」や「厳しさ」も教えてきた。

 雪国の新潟では、冬の間はグラウンドで実戦はおろか、通常の練習すらままならないことも多い。それでも外で練習することにこだわった。ボールを使わずにノッカーのスイングの強弱や、体の角度などで打球方向を判断する「イメージノック」や、吹雪の中、氷上で足元が滑らないように内転筋をうまく使いながら打撃練習を行った。

「竹バットもボールも、一冬越えるとボロボロになります。でも、その道具を並べて、選手たちに『どこのチームよりも道具を大事に使ったと思わないか』って言うんです。寒いし、つらいけれど、ボールもバットもここまで痛めつけるまで使って、そのタブーに挑戦することって、意味のあることだと思うんです」

 2012年夏限りで新潟明訓の監督を勇退後、2013年に新潟医療福祉大硬式野球部の初代監督に就任。「ほとんど全員が右肩上がり」の高校生と違い、大学生の指導のコツは「その選手の旬を見抜いてあげること」。7年間の監督生活の中で、笠原祥太郎投手(DeNA、現台湾・台鋼)、漆原大晟投手(オリックス、現阪神)、桐敷拓馬投手(阪神)らの特性を見抜き、プロへと送り出した。

 新潟医療福祉大は今春より女子硬式野球部が始動。佐藤さんは男女で硬式野球部の総監督を務める。

「これから他の大学とともに、女子野球界をきちっと牽引できるような力を持ってほしいと思っています。男子と両方頑張っていきます」

 67歳にして、新たな挑戦を開始する佐藤さん。4月1日から参加予定の「甲子園予備校」で、自身の経験談、そして今後の展望などを語り尽くす。

新潟明訓高監督として甲子園8度、佐藤和也さんも“参戦決定”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、4月1日(月)から5夜連続(午後8時から)で、オンラインイベント「甲子園予備校」を開催します。甲子園出場経験のある監督、選手と保護者がYouTubeライブに登場。指導方法や練習方法、日頃の生活習慣など、自身の経験を基に、夢や目標を叶えるための対策や準備についてヒントを授けます。参加費は無料。詳細は以下のページまで。

【甲子園予備校・詳細】

聖地の夢叶える“手段と心構え”を披露 元監督・球児・保護者集結、「甲子園予備校」開催

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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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