「試合中にめちゃくちゃ泣いた」 初V目指す健大高崎の一体感…涙を拭った打席
自らの失策で勝ち越しを許すも…仲間の同点打に涙
頼もしい仲間に、思わず涙が出た。第96回選抜高校野球大会は30日、甲子園球場で準決勝2試合が行われ、健大高崎(群馬)は第1試合で星稜(石川)に5-4で勝利し、決勝進出を決めた。田中陽翔内野手(3年)は、4回に勝ち越しを許す適時失策を記録し、チャンスでも1本が出なかったが、助けてくれたチームメートを見て、涙がこらえられなかった。
チーム初の決勝進出を目指した一戦は、1点を争う試合となった。2点ビハインドの4回、健大高崎は安打と相手の失策で同点に追いつく。しかしその裏、2死一、三塁から中谷羽玖内野手(3年)の打球を田中が捕りきれなかった。グラウンダーの打球に合わせようとグラブを前に出したが、打球は外野へ抜けていった。
緊迫した試合で痛恨の1点を与え、思わず天を仰いだ。それでも、ベンチに戻るとチームメートから「気にするな!」「俺らが返すから!」と背中を叩かれた。
5回、6回と両チーム無得点で進み、迎えた7回の攻撃。1死一塁から、前を打つ斎藤銀乃助外野手(3年)が右中間を破る同点三塁打を放った。「カバーしてくれて、めちゃくちゃ試合中に泣いちゃって」。生還する走者とタッチを交わし、目を赤くしながら打席に入った。
チーム内からの厚い信頼「田中がエラーしたらしょうがない」
田中の父はロッテ、ヤクルトで投手としてプレーした充さん。入学後は1年春から活躍するも、秋に右ひざの半月板を手術した。「去年の選抜出るか、今年の選抜に出るかで手術は迷ったんですけど、自分たちの代で日本一を目指したい」。3か月はリハビリに励み、昨春の選抜ではアルプス席で応援した。
今大会は好守でチームを引っ張ってきた。三塁ランナーコーチを務める金井俐樹捕手(3年)は、「田中は守備練習も人より尋常じゃないくらいやっている。田中がエラーしたらしょうがない、自分たちが取り返すしかない」。チーム全員が田中を盛り立てた。
田中は初回と9回に安打を記録したが、2回の1死二、三塁の場面で空振り三振。7回は同点直後の1死三塁では投ゴロに倒れた。「今日は仲間のみんなのおかげで勝てた試合だった」。報徳学園との試合には昨春のリベンジ、群馬県勢初の優勝もかかっている。「悔しさをバネに、明日は自分が貢献したい」。意気込む視線は、まっすぐと前を向いていた。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)