投手は本音「ありがたい」 激減した“長打警戒”…低反発バットが変えた高校野球
今大会から“飛ばない”金属バットを導入…木製バットを使う選手も
第96回選抜高校野球大会は31日、健大高崎(群馬)の初優勝で幕を閉じた。今大会で話題となったのが、新たに導入された“飛ばないバット”。飛び出した本塁打数は3本で、金属バット導入後では最少となった。外野の頭を越える痛烈な打球は減り、打者は困惑。一方でバッテリーからは、打球が飛ばないことで「助かる」といった声があがった。
「パヒュン!」「パキン!」。聞き慣れない金属音が響いた。新たに導入されたバットは最大直径が67ミリ未満から64ミリ未満に細くなり、打球部は約3ミリから4ミリ以上に変更され、反発が抑えられている。
新基準バット導入の効果は如実に表れ、今大会の本塁打はわずか3本。そのうち1本はランニング本塁打だっため、柵越えとなったのは2本だった。苦戦する打者も多く、8強入りした青森山田の4番・原田純希内野手(3年)は、大会では1安打に終わった。「芯に当てることを意識しすぎて、強くスイングができていなかった」とこぼした。
一方で、飛び方は木製バットに近いため、大学やプロといった次のステージでも適応しやすいことや、選手の技術向上という面では利点もある。報徳学園の1番として打率3割をマークした橋本友樹内野手(2年)は、「どうやったら芯に当てられるかというところで、コンパクトなフォームに変えた」と話す。
木製バットを使う選手も現れた。青森山田の吉川勇大内野手(3年)と対馬陸翔外野手(3年)は、木製を使用して高打率を残し、チームの8強入りに貢献。吉川は「この先、高いレベルで野球をやりたいから」と金属を使わない理由を語る。折れてしまうことからコスト面は課題だが、1つの選択肢を示した。
投手や捕手の思考にも変化「思い切ってストライクゾーンに投げられる」
報徳学園の背番号1を背負う間木歩投手(3年)は、「いったと思った打球がいかなかったり、なかなか飛ばない」と話す。投球スタイルはこれまで通りだが、「結構ありがたいです」と本音を吐露した。バッテリーを組んだ徳田拓朗捕手(3年)は「2ボールとかバッター有利なカウントの時に、思い切ってストライクゾーンに投げられる。芯を食われても、外野フライとか、そういうアウトの取り方ができる」と、リードの仕方を大きく変えていた。
報徳学園のバッテリーは、準々決勝で強打者が揃う大阪桐蔭に対して思い切って内角を攻め、主軸の徳丸快晴外野手(3年)やラマル・ギービン・ラタナヤケ内野手(3年)を無安打に封じた。
守備に目を向けると、外野手が下がって守る“長打警戒”は激減。外野手が少し前を守るため、内野手の頭上を越えるライナー性の打球は外野手の間を簡単に抜けていき、長打となる場面が目立った。
今大会では、固い守備が持ち味の報徳学園、「機動破壊」を掲げ走塁にこだわる健大高崎が勝ち進んだ。本塁打が減ってしまう分、どう1点を取るか、いかに1点を取らせないかが、これからの高校野球ではより重要になってくる。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)