山本由伸、メジャー初勝利の舞台裏 日米に咲く笑顔…小さな液晶が“繋げた絆”
山本由伸、メジャー初勝利の数日前にオリックスナインとテレビ通話
■ドジャース 4ー1 カブス(日本時間7日・シカゴ)
ユニホームが変わっても“中身”はそのままだった。ドジャース・山本由伸投手の「絶叫」を見て、胸の中にこもっていたモヤモヤが晴れた。6日(日本時間7日)の敵地・カブス戦に先発登板し、5回3安打無失点、球数80球の粘投で、登板3試合目でのメジャー初勝利を掴んだ。
初回無死満塁のピンチを迎えても、表情は強張っていなかった。冷静にストライクゾーンへ向かって「強いボール」を投じ、3者連続三振でピンチを切り抜けた。3つ目のアウトをカーブで見逃し三振を奪うと、マウンドから数歩したところで雄叫びを上げた。
日頃はクールな25歳も、ゲームになると熱くなる。オリックス在籍時も見てきた渾身の「絶叫」に、どこか安心感さえ生まれた。負ければ優勝の可能性が消滅した2021年10月25日の楽天戦(当時は楽天生命パーク)、クライマックス・シリーズ(CS)、日本シリーズ……。何度も見てきた光景が、ふと甦った。
同僚に大谷翔平投手という心強い味方がいるのだが、“孤独”とも戦っていたのかもしれない。数日前、ウエスタン・リーグ取材のため、大阪・舞洲の球団施設に足を運ぶと、ニコニコしたナインが練習から引き上げてきた。
「さっき、みんなで由伸とテレビ電話をしてました!」
笑顔の理由を尋ねると「さっき、みんなで由伸とテレビ電話をしてました! なんにも変わってなくて元気そうでした!」と答える“元同僚”の姿があった。
メジャーデビュー戦となった3月21日のパドレス戦(韓国・ソウル)では初回に4安打5失点を許して、敗戦投手になった。高尺スカイドームでの現地取材を終え、帰国後にオリックスナインと顔を合わせると「僕らの由伸は、まだまだこんなもんじゃないですから。絶対、波に乗ってくると思います」と温かい言葉で“その時”を待っていた。
その言葉通り、3月30日(同31日)のカージナルスとの本拠地デビュー戦では5回無失点。そして、6日(同7日)のカブス戦も5回無失点で勝ち投手になった。ヒーローインタビューでは翌日の大谷vs.今永昇太投手の対決を問われ「凄く楽しみですし、僕は登板が無いのでしっかり翔平さんの応援をして“どでかいホームラン”を打って欲しいなと思います」と笑った。
マイクを向けられた山本を見て、ハッとした。この言葉こそ自然体……。これまで翌日に先発登板することが多かった宮城大弥投手への“辛口エール”に近いものがあった。シンプルに思ったことを冗談めいて話せる。テレビ電話は偶然かけた通話かもしれない。でも、決して1人じゃない。みんながいる。もう大丈夫だ。
(真柴健 / Ken Mashiba)