鼻歌の大谷翔平と…対照的だった警備員の緊張感 ド軍本拠地初取材、見えた1082億円の重み
大谷翔平球場入りで…壁に寄るよう指示した警備員
■メッツ 9ー4 ドジャース(日本時間20日・ロサンゼルス)
青空のドジャースタジアムのいたるところに7億ドル(約1082億円)契約の重みが感じられた。ドジャース・大谷翔平投手は19日(日本時間20日)、本拠地・メッツ戦に「2番・指名打者」で出場し、4打数1安打1打点1盗塁だった。記者が取材で大谷を見たのは、昨年9月以来。テレビでは何度も見ていたが、実際に青のユニホーム姿を見ると、不思議な感覚に陥った。
銀行詐欺の容疑で連邦当局から追訴された水原一平容疑者が球団を解雇されて1か月。グラウンド外ではどんな表情で過ごしているのか。不安をもって訪れた試合前のクラブハウスに、大谷の姿はなく、ロッカーの椅子に段ボールが詰められたままになっていた。
対面したのは通路だった。突然、緊迫した声色で警備員から、壁に寄るよう指示された。その視線の先に現れたのが、白いジャケットにキャップを被った大谷だった。日本人記者から「心配していました」と問われると、いたずらっぽく「ふっ」と笑って、鼻歌を歌いながらクラブハウスに入っていった。対照的にピリピリの表情を浮かべる警備員を見て、これが7億ドル契約の重みかと感じてしまった。
試合では4回先頭の第2打席で四球を選び、2死から二盗を決め、テオスカー・ヘルナンデス外野手の右前打で一気に生還した。さらに5回2死一、二塁の第3打席では試合前まで19打数1安打、打率.053と苦しんでいた得点圏で適時打を放ち、一矢報いた。大谷の一挙手一投足にファンは大歓声だった。
球場の売店にはたくさんの大谷グッズが置いてあり、日系のスポンサー企業も大量に増えた。以前、大谷は「やってきた技術だったりは基本的には変わらない」と話していた。実際にシーズン序盤こそ不調と言われていたが、試合後の時点で打率.356、4本塁打、11打点、5盗塁、OPS1.022と申し分ない。
大谷のリラックスした表情を見て、ドジャースが7億ドルを払った理由、そして7億ドルの価値が少し分かった気がした。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)