受験連敗、仮面浪人…高校“未経験”も「清原さんがいる」 全国準V逸材の絶えなき情熱

慶大・清原正吾【写真:加治屋友輝】
慶大・清原正吾【写真:加治屋友輝】

慶大野球部に高校野球未経験者が2人…清原正吾は中高と別のスポーツ部

 開催中の東京六大学野球春季リーグで慶大は、NPB歴代5位の通算525本塁打を誇る清原和博氏の長男・正吾内野手(4年)が4番を張り、注目を集めている。中学時代はバレーボール部、高校ではアメリカンフットボール部に所属していた“変わり種”だが、実は、高校野球未経験の選手は他にもう1人いる。

 清原の場合は、小学生時代も軟式の少年野球チームでプレーしていて、硬球に馴染んだのは慶大進学後。それでも最終学年を前に急成長し、今季は全4試合で4番を務め、1本ずつヒットを放っている(通算17打数4安打、打率.235=28日現在)。中学、高校で野球から離れていた分、ここにきてメキメキ上達している印象だ。

 堀井哲也監督は、「大学進学当初は硬球を怖がっていました。ただ、アメフトをやっていたせいか、スローイングは安定していたので、可能性があるかもしれないと思いました」と目を細める。

 そして、「実はウチにはもう1人、高校野球を経験していない部員がいますよ」と堀井監督が付け加えた。渡邊功喜内野手(2年)。リーグ戦には未出場だが、春季リーグ終了後、1・2年生を対象に行われる春季フレッシュトーナメントで活躍を期待される、右投げ左打ちのスラッガーである。

 中学時代には、千葉・京葉ボーイズの「4番・二塁」として2018年の春季全国大会で準優勝した逸材で、慶応高(神奈川)進学を志していた。「ちょうど中3の年に慶応高が春夏連続で甲子園に出場して、文武両道に憧れました」と言う。

 しかし、推薦入学には評定平均がわずかに足りず、一般入試に挑むも不合格。湘南学院高(神奈川)に進学したが、野球部入部は断念した。「甲子園への憧れはもちろんありましたが、慶応高に入れていればともかく、3年間野球をやった上に受験で大学へ進むのは難しいと考えて、勉強に集中することにしました」と説明する。

 大学受験では、慶大の“壁”に再び跳ね返されたが、別の有名私立大学に現役合格し入学。だが、ここで「慶大に入り、高校受験の分もリベンジをしたい」との思いが頭をもたげた。大学生活の傍ら受験勉強を続行し、いわゆる“仮面浪人”の末、ついに慶大総合政策学部に合格を果たしたのだった。

慶大・渡邊功喜【写真:宮脇広久】
慶大・渡邊功喜【写真:宮脇広久】

「清原さんがいるからこそ、自分も負けられないという気持ちになる」

 野球には4年間ものブランクができていたが、2学年上の清原の存在が背中を押した。「清原さんがいるからこそ、自分も負けていられないという気持ちになります。燃えてきます」とボルテージが上がる。

 入学直前に書類提出、入部選考含みの新入生練習会を経て、名門硬式野球部入りが決定した。堀井監督からは「決して簡単ではないが、挑戦する価値のあることだと思う。全力でぶつかってほしい」と激励されたという。「慶応でなかったら、僕のような経歴の選手は挑戦することもできなかったと思います」と感慨深げだ。

 堀井監督は「もちろん、中学、高校での野球経験も貴重なものだと思いますが、慶応には昔から、様々な事情を持つ選手に活躍の機会を与えてきた歴史がありますから」と語る。

 実際のところ、高校3年間のブランクを埋めるだけでも容易なことではない。どれだけ努力したとしても、4年間で誰もがレギュラーになれるわけではないだろう。それでも野球に尽きない情熱を寄せ、どこかに可能性を感じさせる選手に対してはチャンスを与える包容力が、慶大にはある。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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