日本に根強い「休みは悪」は上達の妨げ 睡眠以上に“管理しやすい”疲れの取り方

練習効果を高め怪我を防ぐ疲労回復法とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
練習効果を高め怪我を防ぐ疲労回復法とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

小学生でも必要な“休む勇気”…パフォーマンス向上の3原則は「運動・栄養・休養」

 レギュラーを勝ち取りたい。試合に勝ちたい。野球をしていて自然とわき上がる気持ちは大切だ。しかし、プロ野球選手もサポートしているプロトレーナーの安福一貴さんは、「うまくなるためには“休み方”も重要」と説く。中・長期的に見ると、休む勇気や入浴の仕方が、ライバルと差をつける要素になる。

 保護者への警鐘ともいえるかもしれない。チーム内競争に勝ってレギュラーを獲得したり、大会で優勝したりするには、他の選手よりも努力する必要がある。人が休んでいる時間も練習すれば、他の選手よりうまくなるチャンスは広がるように見える。だが、巨人・中山礼都内野手や中日・村松開人内野手ら多くのプロ野球選手を指導している安福さんは、小学生にも“休む勇気”を訴える。

「パフォーマンスを向上させるには『運動・栄養・休養』の3つの原則があります。レギュラー争いがし烈なチームに所属する選手は特に、休みたくない強迫観念に駆られがちです。日本は休みが悪という考え方が残っている部分もあります。選手に『毎日練習しなさい』と言う親御さんがいるかもしれませんが、体を休ませないと、本来避けられるはずの怪我が増えてしまいます」

 どんな選手でも、練習をしていれば疲労は蓄積していく。その疲労によって普段通りに体が動かず、怪我につながってしまう危険性がある。安福さんは少なくとも週に1回は練習しない日をつくることで、故障を防ぐ以上の効果もあると話す。春季キャンプやシーズンで休みが少ないと思われがちなメジャーリーグでは、キャンプを午前中で終了したり、試合前に打撃練習を回避したりして体を休める大切さが浸透していると指摘する。

「休むと決めた日はバットやボールに触らない、野球のことを考えないなどと制限すると、選手に練習したい気持ちが芽生えてきます。その気持ちが練習のモチベーションにつながります。休んだ翌日は体がフレッシュになっているので、練習をハードにしても問題ありません。休みなく続けるよりも、体や心を休ませてメリハリをつけた練習の方が高い成果を期待できます」

プロトレーナーの安福一貴氏【写真:伊藤賢汰】
プロトレーナーの安福一貴氏【写真:伊藤賢汰】

「寝ようと思って眠れる人ばかりではない」…効果的な湯船の入り方とは?

 体を休める上で、睡眠の大切さを訴える指導者や専門家は多い。安福さんも睡眠によって疲労が回復すると考えている。ただ、「寝ようと思って眠れる人ばかりではありません。睡眠はコントロールできない面があります」と話す。そこで、選手たちには自分で管理できる入浴の重要性を伝えている。

 湯船に入ると体に水圧がかかり、マッサージを受けているような状態になって筋肉がほぐれるという。ゆっくり浸かると体も温まり、内臓の代謝も上がる。

 注意点は半身浴ではなく、肩まで浸かること。安福さんは「のぼせてしまう人は手を湯船から出すとのぼせにくくなります。20分以上入る時は42度だと心臓に負担がかかるので、体温よりも3度高いくらいが目安。長く浸かると汗が出るので水分を補給し、体の中の水分を入れ替えるイメージです」と説明する。

 練習後は湯船にゆっくり入り、週に1回は練習を休む。グラウンド外の行動をコントロールできる選手が怪我のリスクを下げ、パフォーマンスの向上や目標達成に近づける。そして、体を休める必要性を指導者や保護者も理解する必要がある。

(間淳 / Jun Aida)

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