単身赴任先は「寝るだけ」のワンルーム 異例の業界に転身した元阪神ドラ1の今
2020年に現役引退した元阪神・横山雄哉さんはアパレル業界で活躍中
野球界への未練はない。2014年ドラフト1位で阪神に入団し、2020年に現役引退した横山雄哉さんは現在、アパレルの世界で奮闘している。自らのブランド「GAUCHER(ゴーシェ)」を立ち上げ、今年で3年目を迎えた。「プロ野球選手でもアパレルができるという姿を見せたい」と意気込み、第2の人生を歩んでいる。
横山さんは左腕から投じる最速151キロの直球を武器に6年間、阪神でプレーした。「描いていたプロ生活ではなかったですが、それも人生。甲子園の声援は忘れることはありません」。度重なる怪我もあり2020年シーズンを限りにユニホームを脱ぐと、球団のアカデミーでコーチも経験。2022年1月に株式会社「SIR」に入社し、アパレル業界に飛び込んだ。
2022年5月には阪神時代の先輩・山本翔也さんと共に、同社内でブランド「GAUCHER(ゴーシェ)」を立ち上げ、会社の業務と自社ブランドの作業を行っている。
「現役時代から服に興味があって、まずは好きなことをやってみようと思いました。難しい世界ですが、可能性は絶対にある。大変な時もありますが成功させたい」
平日は会社のある奈良県に借りたワンルームのアパート暮らし。「本当に寝るだけの部屋」と語る。週末は家族が待つ兵庫県に戻る、単身赴任生活を続けている。時には簡単な裁縫もこなし、梱包や生地を集めるピッキング、営業回りなど、選手時代には経験することのなかった日々を過ごす。
試行錯誤の日々「デザインの難しさに関して答えはない」
ブランドを立ち上げて3年目を迎えたが、今でも試行錯誤の毎日だ。当初は阪神ファンからの購入もあったが「それを継続させなければいけない。お客様のニーズに応えるものを作る必要がある」。その年のトレンド、サイズや商品などによって在庫を抱えることもあったという。
「自分の好きな服を作っても売れない。思っていた反応と違い、逆に『こっちが売れるんだ』ということもあり、在庫を無くすこともあった。色々と考えていますが、デザインの難しさに関しては答えはないと思っています。でも、リスクを恐れていたら商品は作れません」
忙しい日々の中、嬉しい瞬間もあった。商品の購入者リストを見ると、元チームメートの名前が並んでいた。直接、連絡を受けて渡すこともあるが、陰ながら応援してくれる仲間の姿に心を打たれた。「青柳とか、知っている名前があると嬉しいですよね。僕も選手たちをいちファンとして応援しています」と笑顔を見せる。
「まだまだ勉強して、いい商品を届けたい。そこはブレることはないです」。プロ野球では結果を残せなかったが、群雄割拠のファッション業界で成功を掴むつもりだ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)