大谷翔平で注目の変化球「大きく曲げなくていい」 3年間で掴みたい“自信の1球”

スライダーの握り【写真:小林靖】
スライダーの握り【写真:小林靖】

ジャイアンツアカデミーの成瀬功亮さんが指南…定番スライダー&カーブの投げ方

 この4月から中学生となり、野球部にチャレンジする選手や、小学生の段階では禁止されていた変化球にトライしてみたいという選手もいることだろう。元巨人投手で、現在は球団の野球振興部で小・中学生への指導に携わる成瀬功亮さんは、ストレートと同じ腕振りで投げられるチェンジアップを“最初に覚える球種”に推奨するが、変化球の定番といえば、やはりスライダーとカーブ。2球種の投げ方の注意点や、変化球習得の上でのポイントを教えてもらった。

 北海道・旭川実業高で3年夏の甲子園に出場した成瀬さんは、2010年の育成ドラフトで巨人入りし2018年までプレー。引退後はジャイアンツアカデミーコーチを務め、小・中学生への技術指導や野球振興に努めている。

「チェンジアップがうまく投げられない場合に、次にお勧めする球種がスライダーです」と成瀬さん。ストレートの握りから人差し指と中指をそろえて、やや外側にずらし、縫い目にかけた中指で切るように投げるのが一般的だ。現在は、ドジャース・大谷翔平投手のような横に大きく変化するスライダー「スイーパー」が注目されているが、「そこまで大きく変化させる必要はありません」と語る。

「打者が嫌がるのは、振りにいったところで芯を外されるボールですから、曲がり幅は小さくてもいいです。実際に僕も現役の時は、小さく横滑りするカットボールを習得してピッチングの幅が広がりましたから」

 ポイントとしては、ストレートの腕振りが100%ならば、スライダーは120%と、より強い腕振りを意識することだという。「曲げようとする意識を持ちすぎると、肘が下がったり、フォームが崩れたりしてしまいます。真っ直ぐとの見分けがつかないようにするためにも、ストレートよりも出力のパーセンテージを上げるような感覚で腕を振ることが大切です」。また、捕手のミットを目掛けて投げるというよりも、リリースからミットまでの軌道をイメージしながら練習すると習得しやすいという。

カーブの握り【写真:小林靖】
カーブの握り【写真:小林靖】

“遊び感覚”からスタート…まず真っ直ぐを磨くことは「頭のド真ん中に置いて」

 山なりに変化するカーブは技術的難易度が高いものの、真っ直ぐとの緩急で打者の目線を外すのに有効だ。人差し指と中指をそろえて縫い目に沿ってかけ、親指と挟むように握る。縫い目にかけるのは、中指でも人差し指でも、自分の感覚に合う方でよいという。「中指をかけたほうが曲がり幅は大きくなりますが、僕は小さい変化で速いカーブを投げたかったので、人差し指をかけていました」。

 日頃のキャッチボールの中で、30~40メートルほど離れたところからカーブを投げる練習は、力を入れるタイミングをつかんだり、体のバランスを整えたりする上で有効だ。さらに成瀬さんがお勧めするのは、防球ネットなどの目標物を間に置き、それを越すように投げる方法。必然的に、山なりで変化する軌道もイメージしやすくなる。

ジャイアンツアカデミーコーチの成瀬功亮さん【写真:小林靖】
ジャイアンツアカデミーコーチの成瀬功亮さん【写真:小林靖】

 変化球習得の上で大切なのは、まずは“遊び感覚”で始めてみることだという。

「いきなり投げようとしても、うまくはいきませんから、『こう投げたら、こう変化するのか』ということを、“遊び感覚”で投げながら徐々にコツをつかんでいってほしいですね。あと、自分では変化がイマイチかなと感じている球でも、打者の感覚は違って、意外にファウルや空振りを取れる可能性もあります。ある程度感覚をつかめてきたら、実際に打者を相手に試してみて、反応を確かめてみるのもいいでしょう」

 たくさんの球種を覚える必要はない。中学3年間で「真っ直ぐ以外に、確実にストライクを取れる球種を見つけてほしい。満塁のカウント3-2の場面で、自信を持って投げられる球を1つでも覚えられたら、それだけでピッチングが大きく変わってきますよ」と成瀬さん。

 もちろん、大前提として磨くべきはストレートだ。「ストレートあっての変化球であることは、頭のド真ん中に置いてほしいですね。まずは理想の真っ直ぐを目指し、そこから3年間で“自分の色”を見つけてください」とエールを送ってくれた。

■Full-Countの兄妹サイト「First-Pitch」の記事にて、さらに詳しく握り方・投げ方を紹介しています
https://first-pitch.jp/article/well/pitching/20240509/7462/

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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