“1200万円”に憧れプロ入り コピペわからず悪戦苦闘…元ロッテ・吉田裕太が自動車営業に転身したワケ
吉田裕太さんは現在、自動車販売店「bond cars」の浦和店で勤務
元ロッテ捕手の吉田裕太さんは2022年シーズンで現役を引退し、現在は自動車販売店「bond cars」の浦和店で勤務している。9年間のプロ生活を経て営業職に転身。パソコンも全く使えなかった中で異業種に転身した理由とはーー。
幼少期から車が好きだった吉田さんは中学生の時、自宅の近くを走る日産「GTR」を見かけた。「ビビビッときたんです。すごいなって思って」。それ以来、この車が欲しいと一途に思い続けた。
「親に『それに乗るならプロ野球選手になるしかない。普通の企業で働いていたらなかなか買えないよ』と言われました。それが欲しくてプロ野球選手になったというのも多少はありますよね」
日大三高、立正大を経て2013年ドラフト2位でロッテに入団。プロ1年目、ついに憧れの車を買った。あのとき夢見たGTRで当時1200万円の大きな買い物。10年が経った今も、ナンバーを外して自宅に置いているほど、思い入れのある大切な車だ。
2022年限りで戦力外となり、NPB球団での現役続行を模索したが声は掛からず、現役引退を決めた。「野球はやり切った感があったので、ほかの仕事に就こうと。色々な方に相談したら、自分の好きなことを仕事にしないと長く続かないよというお話をもらったので……」。自分の好きなことを考えた結果、自動車業界に進むことを目指したのは自然の流れだった。
“コピペ”に苦戦も…鳥谷氏の言葉を胸にイチから勉強
吉田さんの1日は長い。朝5時半に起床し、ジムへ。約1時間のトレーニングを経て、自宅から勤務する店舗まで約1時間半をかけて電車通勤する。店舗の閉店は午後8時だが、帰路に着くのは午後10時近くになることがほとんど。それでも「電車通勤、意外と楽です。携帯いじれるし寝られるし。プロ野球選手のとき、なんであんなタクシー乗っていたのかな。もったいないですよね」と笑う。
2023年1月に入社して、1年以上が経った。三十路を過ぎてからの新たな挑戦は、パソコンの“コピー&ペースト”すらできないところからのスタートだったが、先輩スタッフからの温かい指導もあり、メキメキと力をつけている。
純粋に物事を吸収する背景には、かつてともに戦った“レジェンド”の言葉がある。2020年から現役最後の2年間をロッテで過ごした鳥谷敬氏だ。「『野球を辞めてほかの仕事に就く時に、何もできないのは当たり前。それなのに、俺は野球でしか生きていけないと考えるのは違うと思う』という話をずっとしていた。それを凄く覚えていたんです。最初からできる人はいないですもんね」。“元プロ野球選手”というプライドはない。新人として、イチから勉強する姿勢を忘れなかった。
妻と9か月の愛娘のためにも「まずは車の営業として一人前になりたいんです」という目標を掲げる吉田さん。32歳の今も真っ直ぐに努力する姿は、現役時代と何も変わっていなかった。
(町田利衣 / Rie Machida)