育成3年→戦力外で就いたアルバイト 22歳の苦悩…“空白の1年”で選んだ大学生活
2020年から3年間、オリックスに在籍した谷岡楓太は“現役大学生”
夢を叶えるために、苦境も楽しんでみせる。2022年オフにオリックスから戦力外通告を受けた谷岡楓太投手が、関西独立リーグの姫路イーグレッターズで再びのNPB復帰を目指して汗をを流している。
3年間のプロ野球生活だった。「オリックスでの3年目はずっと『肘が痛い』と考えてしまって、メンタルやられて……。(戦力外を受けた後に)それがなくなった途端、まだ俺できるじゃんみたいな感じになりました」
谷岡は2019年の育成ドラフト2位でオリックスに入団。武田高(広島)の2年秋に最速152キロを計測するなど、期待されて入団したが厳しい現実が待っていた。2022年までの3年間で2軍公式戦での登板は1試合のみ。新人時代の2020年に唯一の公式戦登板を果たしたが1回を3安打3四球3失点だった。
21歳で1度は引退を決めたが、2023年3月に“現役復帰”を決断する出来事があった。実家の近くで父親とキャッチボールをしてみると「痛みがなくなっていた」という。現在は「新潟産業大学の通信制に通っています。オンラインで15分区切りの授業です」と“現役大学生”でもある異色のキャリアだ。
自分の夢は、自分の力で掴んでみる。戦力外通告を受けた直後からアルバイト生活に勤しんだ。「クビになってからの1年間はジムのトレーナーをしていました。夕方4時から夜の11時半まで働いていましたね」と分厚くなった両手を見つめる。
アルバイト生活でありながら、右肘のリハビリ生活を送った。高島誠トレーナーがプロデュースする「Mac’s Trainer Room」を頼り、懸命に実戦復帰を目指した。勤務でも、休日でもジムに通う日々に「僕は野球に関係なく、毎日ジムに行きます。トレーニングは欠かせないですね、歯磨きみたいな感じです」と明るい表情で話す。
“孤独”との戦いは慣れている。「高校時代は練習メニューがありませんでした。だから、自分で考えて組み立てていましたね」。自主性を重んじる環境で育ってきた。「高校に入学した当初はプロの世界を見ていませんでした。高校1年の時は(球速が)120キロでしたね。まさか高校2年生の秋に152キロが出るようになるとは思いませんでした」。
育成ドラフト2位で指名された瞬間を鮮明に覚えている。「部室で泣いてしまいましたね。もしかしてプロに行けるのかな……? ぐらいの感覚だったので」。脳裏に焼き付いた光景を、忘れずにマウンドに向かい続ける。
(真柴健 / Ken Mashiba)