12球団が注目する“元捕手”の最速152キロ右腕 無限の可能性を秘める兵庫の逸材
本格的に投手を始めたのは高校入学後「集大成の夏は一番の投球をしたい」
激戦区・兵庫県に無限の可能性を秘める投手がいる。神戸弘陵(兵庫)の最速152キロ右腕・村上泰斗投手だ。中学時代は捕手で、高校入学から本格的に投手を始めた右腕は「自分は負けず嫌い、誰にも負けたくない」と、悲願の甲子園出場とドラフト指名を目指す。
悔しさにまみれた過去と決別するため、最後の夏に全力を尽くす。身長180センチ、76キロの肉体から繰り出される直球は最速152キロをマーク。球の勢いだけではなくカーブ、フォーク、ツーシーム、カット、2種類のスライダーと多彩な変化球も魅力の一つだ。
主戦投手となった昨夏は5回戦で滝川第二に4-6で敗戦、昨秋も3回戦で彩星工科に1-3で敗れ甲子園出場を逃した。「自分のせいでチームを勝利に導けなかった。集大成の夏は一番の投球をしたい」と雪辱を誓う。公式戦では後悔ばかり残るが、“投手”としての成長スピードは目を見張るものがある。
中学時代は捕手として活躍し、高校入学後に岡本博公監督から「身体能力が非常に高い。出力もあり腕の振りも強かった」と評価され、すぐさま投手に転向した。135キロだった直球は1年冬に140キロを計測。その後は筋力トレーニング、瞬発系の練習などで下半身を鍛えると、一冬越えた2年春に147キロ、6月には152キロとスピードを上げた。
目指すべき直球は藤川球児、津田恒美「力と力の対決で三振を取る真っすぐに憧れていた」
自慢の直球には絶対的な自信を持つ。野球を始める前から将来の夢は「プロ野球」と決め、阪神・藤川球児や広島・津田恒美の動画をチェックし続けた。「力と力の対決で三振を取る真っすぐに憧れていました。将来的な目標は160キロですが、今は平均球速を上げフォームの安定感を求めていきたい」と語る。
同校のOBで投手コーチを務める元西武・前田勝宏氏の指導も糧になっている。「前田コーチの経験をたくさん話してもらった。力だけでは打たれる、大人な投球を覚えないといけない」。非公式ながら日本人初の160キロをマークした先輩からは、球速や技術だけでなく“野球脳”の大切さを教わった。
プロからの評価も高まっている。6月に行われた練習試合では日本ハムの栗山英樹CBOも視察に訪れるなど、成長著しい高校生右腕の動向に12球団が注目。本人も「一番の目標は1位。上位で指名される投手になりたい」と意気込む。
兵庫県には選抜大会で準優勝した報徳学園、社、神戸国際大付ら実力校が揃うだけに、夏の甲子園出場は簡単ではない。「全体でレベルアップして勝てるチームになる。負けない投手、投球をしたい」。勝負の夏。最高の結果を残すため村上は腕を振り続ける。