元プロ懸念…少年野球の“守備位置固定”傾向 減少する貪欲さ「“え…”となる子いる」

埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督【写真:加治屋友輝】
埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督【写真:加治屋友輝】

埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督が求める“複数ポジション”を守れる子

 毎年12月末にプロ野球球団の本拠地球場で、全国から選抜された小学5、6年生がプロ選手と同じユニホームを着用して戦う「NPB12球団ジュニアトーナメント」が開催される。今年で第20回を迎えるが、2018年大会から埼玉西武ライオンズジュニアの指揮を執っている星野智樹監督は、複数ポジションをこなそうとしない子どもが増えている、現在の少年野球の“問題点”を指摘した。

「僕はピッチャーなので、僕は野手なので、という子が多いですね。所属チームの方針なのかもしれないですけど、どこか(のポジション)に集中させている。その傾向はあると思います。もちろん、複数をできる子も多くいますけど、専念している子は絶対に増えている。複数ポジションは必ず作ってもらいたいですよね」

 複数のポジションをこなせるか否かは、選手選考にも大きく影響してくるという。「(ジュニアチームは)16人なので。投手が他の守備位置でできないなら、投げられなければ何もできないのか、となってしまう。連戦なので連投もさせられないですし。できれば2つ以上はできてほしい」。限られた人数だけに、戦うオプションを増やすことは重要な要素となってくる。

 さらに複数のポジションを守れることで、その選手自身の出場機会も変わってくる。中学、高校と進んでいくことで新たなポジションを覚える可能性はあるかもしれない。しかし、星野監督は早い段階でできることを望んでいる。

「『僕できます』と言えば、『よし、じゃあそこ守ってこい』となるかもしれない。違うポジションでも出られればいいと思います。試合に出るために。それが小学生のうちにできたらいいですよね」

複数の位置を守れることが出場機会増につながる【写真:加治屋友輝】
複数の位置を守れることが出場機会増につながる【写真:加治屋友輝】

伸びる子どもに共通している積極性「全員がそういう子であってほしい」

 近年では複数ポジションに積極的な子どもが減少しているとも感じている。「少し前は『ここできる?』と聞いたときに、迷わず『できます!』と答えていた子が多かった。今は『え……』となってしまう子もいる。だからといって、できると答えた子に実際にやらせたら、できないこともあるんですけど(笑)。その気持ちがうれしいですよね。なんとかして試合に出たい思いが伝わるので」。

 小・中学生を対象としたライオンズベースボールアカデミーでもコーチを務める星野監督は、「全員に投手、内野手、外野手やらせています。指導者によって考え方は違うけど、僕はやらせます。ちょっとでも動きがわかれば、それでいいと思うので」と語る。各選手にポジションの適性はあるが、あらゆる守備位置を1度は経験させることで全体の動きや、知識も増えていくメリットを伝える。

 もちろん、埼玉西武ライオンズジュニアでも複数ポジションを任せる方針だ。出場機会に貪欲な子を求めている。「『ベンチに僕います』『どこでも行きます』と、全員がそういう子であってほしい。最終的にプロ野球選手になりたいから、ジュニアにチャレンジしていると思う。そういう子はグッと進んで出てくるんです」。伸びる子には積極性が共通していると明かした。

 野球の技術だけでなく、人間としての育成も心がけている星野監督。「そういう部分を大事にしたいんです。たとえ、プロになれなかったとしても、ライオンズジュニア出身で、あの子は頑張っているんだとわかれば、うれしいですよね」。一緒に過ごした時間で、多くの収穫を得てほしいと願っている。

埼玉西武ライオンズジュニアと「特別連携」

 Full-Countと、野球育成解決サイトFirst-Pitchが連携する、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」(ターニングポイント)では、今回、埼玉西武ライオンズジュニアと特別連携。星野智樹監督と3人のアカデミーコーチが出演し、チーム方針や活動意義、選考ポイント、技術的アドバイスを動画配信しています。

【TURNING POINTについての詳細はこちら】
https://first-pitch.jp/about-turning-point/

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

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