巨人“新顔”25歳は「課題がある」 専門家が指摘…1軍定着に必要な能力

ヤクルト戦に登板した巨人・又木鉄平【写真:小林靖】
ヤクルト戦に登板した巨人・又木鉄平【写真:小林靖】

菅野の代役で急きょ先発、燕クリーンアップを3者連続三振もプロ初白星ならず

■巨人 4ー3 ヤクルト(23日・東京ドーム)

 巨人のドラフト5位ルーキー・又木鉄平投手は、腰痛を訴えた菅野智之投手の代役として23日に本拠地・東京ドームでのヤクルト戦に急きょ先発登板した。4回途中で降板し、プロ初勝利とはならなかったが“未来”を感じさせる投球に現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で計21年間、捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「乗り越えなければならない課題がある」と今後の見通しを語った。

 25歳左腕は、1日のプロ初登板初先発で西武打線を6回2安打無失点に抑える好投で、飛躍の可能性を感じさせた。今回のマウンドでも粘り強さは見せた。

 又木は初回先頭、西川遥輝外野手の放ったライナーが右肘付近を直撃するハプニングに見舞われ、1度は治療のためにベンチ裏へ退くも続投。その後、1死満塁と追い詰められたが、村上宗隆内野手を内角低めの146キロ直球で浅い左飛に。続くドミンゴ・サンタナ外野手をチェンジアップで遊ゴロに仕留め、無失点で切り抜けた。

 3回には3番の長岡秀樹内野手、4番・村上、5番・サンタナを3者連続三振。村上にはカウント2-2から、内角低めいっぱいの145キロ直球で空振りを奪った。

 ただ、野口氏は「確かにあの球は非常にいい球でしたが、あれを安定して投げられるようにすることが課題です。全体的に見ると、左打者の内角を突く球が少なかった。狙っても行かなかったのか、岸田(行倫捕手)が怖くて要求できなかったのかはわかりませんが、いずれにせよ改善の余地がある。又木が1軍に定着して安定した成績を残していくには、あそこにしっかり決める能力が必要になります」と指摘する。

 又木は4回、1死一、三塁のピンチをつくり降板。2番手の赤星優志投手が3ランを被弾したため、又木にも2失点が記録された。野口氏が指摘する通り、又木は17人の打者と対戦し、そのうち左打者は8人で計30球を投じた。コース別では外角が17球(57%)を占め、真ん中が7球(23%)、内角は6球(20%)だった。

「左投手vs左打者」の特性を生かせない理由

 又木は今季1軍2試合で、左打者との対戦打率が.250(12打数3安打3四球)、右打者とは.200(20打数4安打5四球)。左投手対左打者は一般的に投手有利といわれているが、その特性を生かせていない。ストレート、スライダーとカーブの中間で120キロ台前半の“スラーブ”、球速130キロ前後のスライダー、チェンジアップ、カーブを持ち球としているが、左打者の内角をえぐるツーシームやシュートはない。

 野口氏は「シュート系がなくても、インコースにストレートを投げ込む力量があれば、投球の幅が広がり、左打者を抑えることはできます。長く第一戦で活躍するには、必要不可欠の能力だと思います」と強調する。

 又木のみならず、左投手共通の課題と言えるかもしれない。たとえば、阪神の先発左腕・伊藤将司は昨季21試合で10勝5敗、防御率2.39の安定感を誇ったが、今季は9試合3勝3敗、防御率3.25。5月に不振で出場選手登録を1度抹消されるなど、波に乗れていない。

「伊藤将は一昨年、左打者によく打たれていました(対戦打率.256)が、昨年は内角を突けるようになって左打者を抑え(同.221)、安定感を増した。しかし今季はまたそこが甘くなっています。伊藤将ほどコンスタントに白星を稼いでいる投手にも、そういうことが起きることがあります。150キロ以上をバンバン投げられる剛腕タイプや、必殺の変化球がある投手なら別ですが、又木のようにキレで勝負するタイプには、インコースに投げ込む勇気とコントロールが必須です」

 野口氏の恩師で、名監督の呼び声が高かった故・野村克也氏も、投手陣に「インコースに投げられない投手は1軍でお金を稼げない」と“教育”されていた。球界に脈々と受け継がれる鉄則の1つだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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