坂本不在で募る危機感…巨人救った“優勝請負人” 首位打者浮上の35歳が語る盟友への思い
阿部監督「思わず我を失ってベンチを飛び出してしまった」
■巨人 3ー2 広島(28日・東京ドーム)
巨人・丸佳浩外野手は28日の広島戦(東京ドーム)の広島戦で、2-2の同点で迎えた延長10回にサヨナラ5号ソロを放つなど、5打数4安打の大活躍。今季打率.310、出塁率.396はいずれもリーグトップだ。精神的支柱の坂本勇人内野手が打撃不振で2軍調整となり、危機感が漂ったチームを救った。
「思わず我を失って(ベンチを)飛び出してしまいました」。普段ポーカーフェイスを貫いている阿部慎之助監督が、そう明かしたのも無理はない。延長10回1死走者なし。丸がカウント2-0から、広島の守護神・栗林良吏投手のカットボールをとらえた瞬間、それとわかった当たりが右翼席中段に飛び込み、巨人ナインは歓喜のフィナーレに酔った。
丸自身は「カウント2-0で、相手にしてみれば四球を出すのは嫌だろう、ストライクゾーンに投げてくるだろうと考えて、思い切り強く振りました。(感触は)完璧でした」とあくまで冷静に振り返った。
負けていたらと思うと、ぞっとする。4.5ゲーム差をつけられて迎えた首位・広島との3連戦初戦。絶対に落とせない試合で1点リードの9回、守護神アルベルト・バルドナード投手の暴投で同点に追いつかれた。そうでなくても、坂本が今季打率.234の打撃不振で、26日に出場選手登録を抹消され再調整に入ったばかり。阿部監督の「8、9月に(坂本が)いなきゃ終わるんで」というコメントが、チーム状況を表している。
今季1番での成績は打率.341、出塁率.417、4本塁打
丸は坂本より“1学年下”にあたるが、4月生まれの丸と12月生まれの坂本は、今のところ同じ“満35歳”。丸は報道陣の前で「勇人さんはたぶん、悩んでいるとは思いますが、その中でもある程度(1軍復帰へ)道筋を立てていると思う。絶対に必要な選手だと思うので、その間、僕だったり長野(久義外野手=39歳)さんだったり、ベテランと呼ばれる選手が、帰ってくるまでチームを支えていけたらと思います」と力を込めた
丸自身、昨季は打率.244の不振に終わり、広島時代の2012年以来11年ぶりに規定打席到達も逃した。阿部監督が就任当初、レギュラー確定選手として名前を挙げたのは、坂本、岡本和真内野手、門脇誠内野手の3人だけで、実績抜群の丸も競争を勝ち抜いてポジションを確保しなければならない立場だった。
開幕後は復活を実証。特に4月末以降は、ほぼ1番に定着しており、1番に入った時の成績は打率.341、出塁率.417、4本塁打に上る。阿部監督は「今年はすごく“らしさ”があるなと思って見ています。打率が3割を超えて、出塁率も高い。だからこそ1番に入れているのですが」と手放しで称える。丸の復活ぶりは、同年代の坂本にとっても刺激になるだろう。
丸は広島時代の2016年から2018年まで、チームをリーグ3連覇に導き、2019年と2020年にはFA移籍した巨人で連覇。“個人5連覇”を達成した優勝請負人だ。今季について「このあたりからどんどんしびれる試合が増えていくと思う。実際に今日もそういう試合だった。監督も『そういう試合に勝っていくことで、チームとして強くなるし、みんなが上達する』と言ってくれている」と話す言葉にも、格別な説得力がある。それこそ8、9月へ向けて、さらに存在感を増していくに違いない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)