吉田輝星が嘆いた夜「150キロが当然」 新天地初勝利の舞台裏…習得した“秘球”

オリックス・吉田輝星【写真:真柴健】
オリックス・吉田輝星【写真:真柴健】

オリックス・吉田輝星、新天地でも止まらぬ“進化”

 力強く握った右拳が、全てを物語っていた。オリックスの吉田輝星投手が6月29日のロッテ戦(ZOZOマリン)で移籍後初勝利を1球でマークした。3-3と同点の9回2死一、三塁で7番手を託された。打者は荻野。一打サヨナラのピンチで初球に選択したのは「食い込むシュート」。今季から取り組んでいた“秘球”だった。

 強い気持ちで内角に投じて三ゴロに打ち取り、雄叫びをあげた。9回に登板した5番手の鈴木博志投手、6番手・山田修義投手との3人で「1人1アウトリレー」を完成させると、3番手で登板していた古田島成龍投手が吉田をベンチ前まで迎えにきた。「毎試合“優勝”してますよね、あの人は(笑)」と2歳上の“絶叫ルーキー”に愛情を込めて「いじる」を日々にも慣れてきた。

 昨オフに日本ハムからトレードでオリックスに移籍。新天地での躍動を支えているのは「仲間の存在」であることは間違いない。少しだけ“嘆いた”夜がある。「みんな150キロ、当然のように投げますよね……」。

 決して悩みではない。「自分も、キャンプから中垣さんたちに教わっている取り組みが良い感じになってきた。少しでも貢献できるように頑張ります」。6月25日のソフトバンク戦(京セラドーム)の2番手で登板すると、1死で迎えた佐藤の打席で151キロを計測。翌日、確認してみると「自己最速っすよ!」と不敵な笑みを浮かべた。

 6月は10試合に登板して防御率0.00。自信を持ってマウンドに上がっている。2連投した6月25、26日のソフトバンク戦では“秘球”のシュートも投じていた。「真っすぐに見えてました? あれ、シュートです」。その3日後……。「勝負の1球」に選択できるまで、自信が深まったのだった。

「僕、スペンサー・ストライダーっていう投手がめちゃくちゃ好きなんです」

 ここ最近ではワインドアップ投法も「しっくり来ています」と手応えを示している。練習中のキャッチボールで、ふと脳裏をよぎった言葉は「なんで、メジャーリーガーはみんな、ああいうフォームになるのかな……?」。憧れの存在を追うため、映像を何度も確認した。

「僕、スペンサー・ストライダー(ブレーブス)っていう投手がめちゃくちゃ好きなんです。(体格が)あんまり大きい方ではないですけど、100マイルをずっと投げている。メジャーでは珍しく、ずっと足を使って投げているタイプ。球が伸びるし、歩幅も広めで体重移動がすごくうまいんです」

 愛車に乗り込む顔が、充実感に満ちてきた。「もっともっと強いボールを投げたい。みんなに負けていられないです。今年のオフはもっとどっしりできるように下半身を強化したい。走って、トレーニングして……。まだまだですよ」。すでにパンパンの太もも、お尻がパッチパチのズボン……。努力は成果として報われる。

(真柴健 / Ken Mashiba)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY