上達速度が変わるキャッチボールの“大前提” 元プロ伝授…球質がバラけない「基準」

野球教室を開催した元日本ハム・杉谷拳士氏【写真:小林靖】
野球教室を開催した元日本ハム・杉谷拳士氏【写真:小林靖】

元日本ハム・杉谷拳士さんが野球教室で子どもたちにボールの握り方を解説

 基本を大切に繰り返してきたからこそ、プロの世界で14年間もやれたという自負がある。元日本ハムの杉谷拳士さんが今月13日、東京都新宿区の明治神宮外苑軟式野球グラウンドで行われた「ゼビオジュニアベースボールフェスト2024」に出席。同イベントのアンバサダーを務める杉谷氏は、小学3年生以下で構成された学童16チーム、約200人の子どもたちに野球教室を開催し、キャッチボールの際に、エントリー層の興味を引くわかりやすい目印から、ボールの握りを伝授した。

「まずは(学童軟式野球で使用するJ号球の)『J』のマークを自分の方に向けてください。そして向けたまま、横から人差し指と中指を縫い目に乗せてください。キャッチボールをする時は、常にこの握りで1球1球やってもらいたいです」

 ボールの縫い目に指をかけて投げることが大切なことはわかっていても、野球を始めて間もない子どもにとっては、何を基準に合わせればいいかわからず、投げるたびにバラバラの握りになってしまう。「J」マークを自分の方へ向け、横から縫い目に指先を乗せてやるだけで、フォーシームの握り方となり、回転のいい球を投げることができる。

「ボールの握り方がわからない状態で野球を始めるのと、しっかりとした握り方で回転をかけて投げることができるのとでは、前進するスピードが変わってきます。最初に、ボールの握り方というのは大事にしてもらいたいですね」

子どもたちにアドバイスを送る杉谷氏【写真:小林靖】
子どもたちにアドバイスを送る杉谷氏【写真:小林靖】

まずは「毎日触れること」…打撃はシャトル打ちがオススメ

 投げ方やフォームなどは、体格などの違いもあるため、それぞれの個性を見極めていく必要があるが、それ以前に、上達するために大切なことは「毎日ボールに触れること」だと断言する。

「僕は毎日投げていましたね。土日だけ野球をやるのではなくて、毎日野球道具に触れるというのが一番大きかったと思います」

 東京都心などは球技を禁止している公共施設も多く、野球をするスペースは限られている。練馬区で生まれ育った杉谷さんは、野球のボールより飛距離の出ないバドミントンのシャトルを毎日打ち込むなど、工夫しながら練習に取り組んでいたという。

「仲間たちと近所に集まって、日が暮れるまでずっとやっていました。しっかりとタイミングを取って、自分のスイングで打てますし、飛ばないですから、より実戦に近い形で練習ができるので、シャトル打ちは本当にオススメです。それこそスイッチヒッターの練習じゃないですけど、遊び半分で左でも打っていたことが、自分の野球人生につながったのかなと思います」

 プロ入り後から本格的に両打ちに転向し、2019年の楽天戦で史上19人目の左右両打席本塁打を達成した背景には、幼少期から積み重ねてきた努力があった。

「プロに入ってレベルの高さに驚いて、おそらく3年ぐらいでクビになるんじゃないかなと不安な気持ちでスタートしました。そこからどう活躍するかということをイメージしながらトレーニングをして、体は小さかったですけど、14年間何とか続けることができました」

 継続することの大切さを教えてくれた杉谷さんの言葉は、きっと子どもたちの心に響いたに違いない。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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