チグハグの背番号、安堵で本音の名将…「ようやく見つけられた」 苦難越え9年ぶり聖地
9-9の9回無死満塁で8番打者がサヨナラ打を放ち壮絶な打ち合いに決着
壮絶な打ち合いを制した。早実高は28日に神宮球場で行われた夏の高校野球西東京大会決勝戦で日大三高にサヨナラ勝ちし、9年ぶり30回目の夏の甲子園出場を決めた。9-9の同点で迎えた9回、無死満塁のチャンスに「8番・二塁」で出場していた内囿光太内野手(3年)が左前へサヨナラ打を放った。
夏の甲子園は、清宮幸太郎内野手(現日本ハム)が1年生で2本塁打を放ちベスト4入りを果たした2015年以来、実に9年ぶり。甲子園自体は、2017年春の選抜以来7年ぶりの出場となる。
2006年にエースの斎藤佑樹氏(後に日本ハム)を擁し全国制覇を成し遂げた名将、和泉実監督は「ほっとしたのと疲れたのと……。この間、新型コロナウイルスの感染拡大で甲子園がなくなってしまったこともあった。甲子園に行くつもりで入学してきても、現実にどうすればいいのか、先輩から受け継いできたものが途切れていました。その分、自分たちでこじ開けなければならなかった。この西東京大会も苦しい試合の連続でしたが、3年生を中心によくやったと思います」と感慨深げ。長かった“ブランク”を振り返った。
西東京大会開幕後も試行錯誤を繰り返した。というのも、決勝戦で遊撃を守ったプロ注目の主将、宇野真仁朗内野手(3年)の背番号は「5」。「3番・三塁」で出場した高崎亘内野手(3年)は「6」。ファーストを守った國光翔外野手(2年)は「9」だった。和泉監督は「登録時点では背番号通りだったのですが、どうにも収まりが悪くて、ようやくハマってくれました」と苦笑する。
打順も当初1番だった宇野を2番に入れてから、打線がつながるようになった。62歳のベテラン監督は「チームはどんどん変わっています。成長しているというか、ようやく僕が子どもたちを見つけられたのかなと思います」とうなずいた。高校通算64本塁打の宇野はこの日、1発こそ出なかったが、初回に右中間を破る先制適時二塁打を放ち、その後も接戦の中、3四球と1死球で結局全打席出塁。1盗塁も決めてチームに貢献した。
西東京大会決勝で対戦すれば、勝った方が全国制覇する“法則”
決勝戦の相手が日大三だったことも感慨深い。西東京の宿命のライバルで、2006年に決勝で対戦し早実が勝った時は、早実が甲子園で全国制覇。逆に2011年の決勝で日大三が勝った時にも、やはり全国優勝まで駆け上がった。日大三は長年チームを率いてきた小倉全由前監督が2023年限りで勇退し、部長を務めていた三木有造監督が昇格しているが、この“法則”通りなら、今年の早実も全国優勝の可能性が高いことになる。
和泉監督は「(日大三は)強いよ。監督が代わったから、もうちょっと与(くみ)しやすいのかと思ったら、全然変わらなかった」と苦笑。「でもね、このチームに勝つことで、甲子園に行ってから、強いチームと対戦しても選手たちが臆せずやれるところがある。三高さんに強くしてもらっています」と感謝を口にした。全国制覇については「失点が多いので、そこを整備しないと、そうはいかないと思います」と、この日は5投手を投入し9失点のディフェンス面を課題に挙げた。
自身も久しぶりに“聖地”に足を踏み入れる名将。「2部制とか、経験したことのないこともある。ある意味、初出場の気持ちで僕自身も大会に早く慣れて、選手たちが力を出し切れる環境をつくりたいと思います」と檜舞台に思いを馳せた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)