野球に猛反対…男子監督の父を“説得” 「道を作る」花巻東女子主将が繋いだ夢
花巻東・佐々木秋羽主将の父は男子野球部監督、兄は米大学進学予定の麟太郎
「第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会」の決勝が3日に甲子園球場で行われ、花巻東(岩手)は神戸弘陵(兵庫)に0-3で敗れ、初優勝はならなかった。「2番・左翼」で出場した主将の佐々木秋羽外野手(3年)は沼田尚志監督に「ごめんなさい……」と謝ると顔を抑えて号泣。7日に開幕する「第106回全国高校野球選手権大会」に出場する男子硬式野球部へ、同校初の全国制覇の夢を託した。
幼少期から最も身近なスポーツが、野球だった。父は花巻東の男子硬式野球部の佐々木洋監督。MLBで活躍する菊池雄星投手(アストロズ)や大谷翔平投手(ドジャース)が同校に在籍していた時は、甲子園のスタンドから応援した。「(2人に)すごく憧れて、花巻東のユニホームを着たいと思うようになった」と振り返る。
菊池や大谷が在学していた2010年代はまだ同校に女子硬式野球部がなく、同じユニホームを着るには男子硬式野球部に入るしかなかった。しかし、佐々木が中学3年生になった2020年春、花巻東にも女子硬式野球部が創られ、同年夏には初めて甲子園で女子選手権大会の決勝が行われた。だが、父には、高校で野球を続けることを猛反対された。
「男子はプロ野球とか社会人とかいろんな道があるけど、女子はまだあまり道ができていなかったので。他のスポーツをしたり、違う学校に進めば、もっと人生が変わると考えて反対していたんだと思います」。
「先駆者になって道を作る」…野球に猛反対だった父を説得
しかし、憧れのユニホームは何ものにも代え難かった。「すごい反対されたんですけど、野球を続けるっていう判断をした時に応援してくれたのは家族のみんなだった」という佐々木の言葉通り、この日のスタンドには、父が率いる男子硬式野球部と、スタンフォード大学進学を控えている同野球部OBの兄・麟太郎内野手も応援に駆け付けていた。
全国制覇にはあと一歩届かなかったが、今夏を含めて高校3年間で全国大会準優勝に3度輝いた。まだ発展途上である女子野球の世界で「先駆者になって道をつくる」と父を説得したという佐々木に、全国の小さな女子球児たちへの想いを問うてみた。
すると、遠い夏の日、甲子園で夢を与えてもらった幼い頃を思い出したかのように一瞬の間を置き、大粒の涙を溢れさせた。そして声を詰まらせながら「いろんな子が自分たちのプレーを見て、花巻東に入りたいと思ってくれれば」と願っていた。