顔面死球で曲がった鼻「ひどい状態だった」 壮絶な手術、大谷元同僚が拭えぬ“恐怖”

取材に応じたエンゼルスのテイラー・ウォード【写真:川村虎大】
取材に応じたエンゼルスのテイラー・ウォード【写真:川村虎大】

エンゼルスのウォードが顔面骨折を説明「ここも骨折したし、ここも骨折した」

「ここも骨折したし、ここも骨折した」。自らの顔を指差し、丁寧に説明する。エンゼルスのテイラー・ウォード外野手は昨年7月末、顔面に死球を受けてシーズンを終えた。今季復帰したが、6月末に今度は頭部へ死球。「ボールがまた直撃するのではないか」。打席に立つたびに頭によぎるようになった。

 ウォードの顔面には3つのプレートが入っている。昨年7月29日(日本時間30日)の敵地・ブルージェイズ戦でアレク・マノア投手の投じた91.7マイル(約147.6キロ)が顔面に直撃。鼻は血まみれになり、そのままカートに乗せられ途中交代。60日間の負傷者リスト(IL)入りしシーズンを終えた。

 顔面の複数骨折で手術を行った。左目の下に切り込みを入れた部分をなぞり「プレートの1つは、まぶたから入れた。クレイジーだよね」。中でも鼻を治すのには4か月かかったという。「ひどい状態だった」。想像するだけでも鳥肌が立つような話ばかりだった。

 それでも1年が経ち、笑って話せるようにもなった。「顎にボールが直撃した選手が(骨折した顎を)針金で固定された話を聞いたことがある。それに比べたら、マシだったよ。顎は骨折しなかったから、プレートを入れるだけで済んだからね」。笑顔で振り返るが、“済んだ”という内容ではない。

6月末に再び頭部死球…残ったトラウマ「また直撃するのでは」

 復帰シーズンとなった今季は開幕から好調だった。4月は打率.275、5本塁打、19打点。打点王のタイトル争いを演じるなど、大谷翔平投手の抜けた打線を支えた。しかし、6月30日(日本時間7月1日)の本拠地・タイガース戦では再び93マイル(約149.7キロ)のフォーシームが頭部に直撃した。

「正直言って、このような状態になることを望んでいなかった。ボールがまた直撃するのではないか、と思っていた」。打席に立つたび記憶が蘇った。それまで打率.243、14本塁打、43打点、OPS.767の成績をマークしていが、以降は7月終了まで打率.174、2本塁打、11打点、OPS.499と低迷した。

 それでも7月28日(同29日)の本拠地・アスレチックス戦では逆転の満塁弾。徐々に復調の兆しを見せてきた。「死球の不安にふん切りをつけられるようになった」。チームは地区4位に沈み、プレーオフ進出は今年も絶望的。それでもこのチームで勝ちたいという思いは強い。「自分たちの野球をするだけだ」。恐怖心を払拭して、打席に立ち続ける。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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