鍛錬が生んだ平常心 育成出身25歳“新星”…疑問が生んだメンタル「それじゃダメなんです」
オリックス・大里昂生が乗り越えた「準備って言っても…どうするの?」
冷静沈着に日々を過ごす。オリックスの大里昂生内野手が1軍定着に向け、気迫のこもったプレーを続けている。「とにかく必死です。打席でも守りでも、ボールに食らいついていこうという気持ちしかありません。このまま最後まで突き進みたいなと思っています」。充実の毎日に目を細める。
大里は2021年の育成ドラフト3位で東北福祉大からオリックスに入団。昨季の開幕直後に支配下選手登録を勝ち取った。大卒3年目の今季は7月2日に初昇格。7月6日の日本ハム戦(ほっともっと神戸)でプロ初スタメン出場すると、プロ初安打を含む2安打を放ち、お立ち台に上がった。
粘り強い打撃と堅実な守備でスタメン出場の機会を増やしており「僕みたいな選手はダメだったらファーム行きが待っている。だから(活躍する)気持ちの準備はしていました」と力を込める。
持ち前の打撃センスも磨いており、8月6日の西武戦(京セラドーム)ではプロ初アーチも描いた。1軍昇格後も「今年はしっかり振れている感覚がある。長くボールを見れていますし、打ちにいく中でボールを選べている感じがしています」と説明する。
勝負の3年目。灼熱の大阪・舞洲で真剣に悩んだことがある。「準備って言っても……どうするの?」。昨季の1軍出場は5試合で打席機会は2。1軍戦のイメージは簡単にはできなかった。
「そう思っていましたけど、それじゃダメなんです。ファームにいる時、波留さん(育成チーフコーチ)から『絶対1軍にいると思って打席に入れよ』と言っていただいたことを覚えています」
貫く平常心「わからなかったら、申し訳ないですけど、もう1回聞きます」
長い2軍生活でも“昇格”を諦めなかった。1軍でのプレーでも「2軍でやっていたことを、そのまま表現しようと思っています」と“平常心”を貫く。「良い意味で大舞台とか歓声を、その瞬間は気にしないようにしています。試合が始まれば『同じ1試合』なので。今、うまく集中できていると思います」と胸中を明かす。
感謝の気持ちを忘れない。2軍生活時代、ウエスタン・リーグの試合を観戦に来てくれるファンも多かった。「応援してもらえる大切さを知っています。『よっしゃ、1軍選手だ』という感覚はないです。ファームの時と今と、何も変わっていません」。そう言いながら、私服に目線をやり「ね?」と笑った。
直近では1番打者としての起用も目立つ。「何番だろうが、試合に出させてもらっている立場なので。(打順は)その時の状況判断だと思っています。1番は絶対に初回先頭打者ですけど……。例えば8番、9番でも3回の先頭打者なら役割は変わらないと思っています」。出てくる言葉に頼もしさがある。
日々の練習から、首脳陣の助言を的確に理解することを心掛けている。「わからなかったら、申し訳ないですけど、もう1回聞きます。コーチの方々の助けがないと、今の僕はないと思う。だから、今この瞬間を信じて。思い切ってやることが求められているのかなと思っています」。高鳴る鼓動を抑え、全速力で駆け抜ける。
(真柴健 / Ken Mashiba)