スタメン全員2年生の“真相” 3年生はベンチ…献身的な菰野主将が明かすメモリアルゲーム
現阪神の西勇輝がエースだった2008年以来16年ぶりの出場
第106回全国高校野球選手権大会は9日、甲子園球場で大会3日目が行われ、現阪神・西勇輝投手がエースだった2008年以来16年ぶり3度目の出場となった菰野(こもの=三重)が、6-2で南陽工(山口)を破った。春夏合わせて4度目の出場で、念願の甲子園初勝利となった。
「(甲子園初勝利を)目標には掲げてきましたが、まだ実感が湧きません。子どもたちがよく頑張ってくれました」。試合後、お立ち台に上がった森田亮太監督は戸惑い気味に笑顔を浮かべた。
今年の菰野の特徴は、極端に2年生中心の編成となっているところにある。この日もスタメン9人に、途中出場の森柊真内野手を加えた10人全員が2年生だった。一方、ベンチ入りしている6人の3年生には、三重大会でもほとんど出場機会がなかった。
主将の山口拓真内野手(3年)は三塁ベースコーチを務め、この日は守備中に伝令としてマウンドへ駆け寄るシーンもあった。「三塁コーチは1点が入るか入らないかの重要な役割ですし、キャプテンとして率先してチームに勢いをつけられたらと思います」。
この日は3-0とリードして迎えた5回、2死一塁で6番打者の栄田人逢投手が中前打を放った際、一塁走者の野田親之介内野手が一気に三塁を狙い、相手の中堅手の好返球でタッチアウトとなった。山口主将は三塁ベースコーチとして「一塁走者の足をもう少し考えて回せばよかったかなと思いますし、一方で、事前に(三塁を狙えと)一塁走者に声をかけておけば、ギリギリでセーフになっていたかもしれないと思います」と反省していた。
菰野が実力優先で下級生中心の編成となったのは、昨秋の三重大会からだ。その際は1回戦敗退。今春は三重大会で準優勝、東海大会でも準優勝の結果を出した。山口主将は「春の県大会と東海大会で勝ち上がれたことが、チームが1つになる上でよかったと思います。2年生は堂々とプレーしてくれましたし、2年生からは『3年生が全力で応援してくれたことが力になった』という声が上がりました」と振り返る。
三重大会前、ベンチ入りできなかった3年生がメモリアル・ゲームに出場
今夏の三重県大会を前に、ベンチ入りメンバーから外れた3年生もいたが、「チームのために気持ちを切り替えて動いてくれています。全部員が1つになってつかめた甲子園切符だったと思います」と山口主将は言う。
三重大会を前に、ベンチ入りできなかった3年生でメンバーを組み、練習試合を“メモリアル・ゲーム”として行ったという。山口主将は「あれでしっかり区切りをつけて、3年生全員が県大会に集中することができました」と指摘した。さらに三重大会直前、前監督が交代となり、部長だった森田監督が急きょ就任する試練にも見舞われたが、1つになったチーム力がそがれることはなかった。
「甲子園初勝利の目標をクリアできたので、これからはベスト8を目標にして、目の前の試合に全力で臨みたいと思います」と山口主将はボルテージを上げた。躍動する2年生の後ろに、3年生の献身的なサポートがある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)