京都国際、勝利の裏に“異色ルール” 部長が掲げた禁止事項…気付かされた弱点

マウンドに集まる京都国際ナイン【写真提供:産経新聞社】
マウンドに集まる京都国際ナイン【写真提供:産経新聞社】

京都国際が新潟産大付属を下し3回戦進出を決めた

 勝利を重ねたからこそ生まれた悩みがあった。第106回全国高校野球選手権大会は14日、甲子園球場で2回戦が行われ、第3試合で京都国際が新潟産大付属に4-0で勝ち、3回戦進出を決めた。接戦を勝ち切った強い精神力の根底には、“笑顔禁止”という意識統一があった。

 0-0で迎えた7回2死一、三塁で3番・澤田遥斗外野手(3年)が右前適時打を放ち、均衡を破った。8回にも小技や2本の二塁打などで3点を追加。投げては先発左腕・西村一毅(2年)がわずか3安打に抑え、138球で完封した。

 接戦を勝ち切った裏には精神的な成長があった。今春、京都国際は近畿大会を制した。しかし、優勝したことが逆に“足かせ”となり、強いチームは余裕を持たないといけない、負けてはいけないという思考に陥ってしまったという。そんな状況を見て、宮村貴大部長が“笑顔禁止”という言葉を授けた。

 笑顔禁止は決して喜ぶなという意味ではない。宮村部長は「自然と出る喜びはいいのです。喜ぶのが禁止なわけではなく、喜ぶ時間がいつまでも続いては次の準備ができないと伝えたかったのです」と意図を説明。実際に安打を放ったり得点を奪ったりすれば、選手たちにガッツポーズや笑顔も見える。切り替えの重要性や、無理やり笑う必要はないことを伝えたかった。

 藤本陽毅主将(3年)も「ビビっている時に作ってしまう笑顔ってあると思うんです。焦っているのに、余裕があるように見せかける笑顔は違うと思うので」と語る。勝利だけを考え、“余分な笑顔”は排除した。

 この日も、9回2死満塁のピンチを迎えると、球場全体から劣勢の新潟産大付属の応援に合わせた手拍子が始まり、完全にアウェー状態に。ベンチの選手からは「自分たちの事嫌いなのかな?」と思わず本音が漏れるほどの一体感だった。それでも、京都国際は浮足立たなかった。“笑顔禁止”で培った精神力で、窮地を乗り越えた。

 勝ち続けたからこそ気付いた“弱点”だった。偽りの笑顔を取り払ったことで、得られた強さがそこにあった。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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