酷暑で負担増…投手への「マウンド上給水」はNG? 元プロ提言、交代以外の“救済策”

マウンドに給水ボトルを持参する仙台大・坪井俊樹コーチ【写真:川浪康太郎】
マウンドに給水ボトルを持参する仙台大・坪井俊樹コーチ【写真:川浪康太郎】

炎天下の投手負担を懸念…仙台大・坪井俊樹コーチはマウンドに給水ボトルを持参

 酷暑が猛威を振るう昨今、野球界でも「暑さ対策」に関する議論がたびたびなされている。現在開催中の第106回全国高校野球選手権大会では暑さ対策として、大会1~3日目に試合開始時刻を午前と夕方に分ける「2部制」が試験的に導入された。そんな中、仙台大硬式野球部コーチで、元千葉ロッテ投手の坪井俊樹さんは、試合中のマウンドでの「給水」を推奨している。その狙いと効果について話を聞いた。

 今春の仙台六大学リーグを無敗で制し、全日本大学選手権に出場を果たした仙台大で指導する坪井コーチは、仙台六大学連盟付属審判部に確認し許可を得た上で、2年前の夏頃からマウンド上で給水を行っている。給水のためだけにタイムを取るのではなく、投手にアドバイスを送るために通常のタイムを取る際に、スポーツドリンクの入った水筒やタオルを持参する。

「ピッチャーは“炎上”してしまった場合、1イニングで30球以上を投げることになります。30球投げるのはかなりきついし、意識も朦朧としてくるんです。そういうタイミングで水を飲むと体温が下がったり、頭がリセットされて気持ちも楽になったりと、いろいろな効果があると思い、推奨しています」

 もちろん、投手の仕事は投げることだけではない。守りの時間が長くなればベースカバーの繰り返しで体力の消耗が激しくなり、炎天下での登板となれば余計に負担が増す。

 坪井コーチ自身、ロッテでプレーした元投手。投手心理を理解している上に、投手陣から「水を持ってきてもらえるとありがたい」との声が挙がったことから取り組みを継続している。現時点ではベンチの判断で「選手がきついだろうなというタイミング」を見極めているが、「バッテリーが(給水が必要という)合図を送るようにしてもいいと思う」と坪井コーチは話す。

仙台大コーチを務める坪井氏【写真:川浪康太郎】
仙台大コーチを務める坪井氏【写真:川浪康太郎】

明確な制限はないものの…「全国的に認められていないケースも多い」

 試合中にマウンドへ向かうコーチらが水筒やタオルを持参し、投手に水分補給させる行為は、プロ野球でもアマチュア野球でも明確に制限はされていない。しかし、「給水が制限されていないことを知らない」または「給水が必要だと思っていない」指導者は少なくないという。

「ピッチャーが“重労働”をして苦しんでいる時に、交代でしか助ける方法がないとなってしまうのではなく、給水を挟んでまた投げられるようにしてあげればいい」と坪井コーチ。選手を守るための策を全国に広めたいとする思いは強い。

 仙台六大学野球連盟付属審判部の坂本健太審判部長は「(同連盟では)熱中症対策として給水を認めています。(給水について)明確な規定や基準はありませんが、全国的には認められていないケースも多いです」と話す。酷暑の時代、ルールに則った上で、現場の声に耳を傾け、柔軟に対応する必要があるだろう。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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