CS完全消滅も…快勝に「文句ないでしょ?」 40歳の意地、“異例”の呼びかけに込めた思い
球団3人目となる20年連続本塁打を放った
■西武 2ー1 日本ハム(31日・ベルーナドーム)
西武は8月31日、ベルーナドームで行われた日本ハム戦に2-1で逆転勝ちした。1点を追う8回に代打・栗山巧外野手が1号決勝2ランを放った。今季、何度かお立ち台を“固辞”してきた40歳のベテランは「きょうは文句ないでしょ」と登壇。ファンにも異例の呼びかけで本拠地を盛り上げた。
0-1で迎えた8回2死三塁、代打で登場した栗山は代わったばかりの河野竜生投手の初球、146キロの高めの直球を捉えた。「ちょっと上がっちゃったので、伸びて欲しいなと」。放物線はそのまま右翼席に吸い込まれた。
伊東勤、中村剛也に続く球団3人目となる20年連続本塁打が土壇場で飛び出し、本拠地は大歓声。同僚もベンチから飛び出してベテランを迎える。栗山も「興奮して覚えていないんですけど、大きな歓声がしているなというのは分かりました」と笑った。
プロ23年目、今月3日には41歳になる。以前ほどの出場機会はない。今季は44試合の出場にとどまり、先発出場は30試合。それでも何度かお立ち台に上がるチャンスはあり、若手優先でと“固辞”していた。自分ではなく、これからのチームを担う若手がスポットライトを浴びればいい。
しかし、この日は違う。「文句なしでしょ」。暗転したグラウンドに歩を進め、視線独り占めの高い位置に立った。「賛否ないと思ったので」とおどけて振り返った。前日30日の敗戦でチームは今季の4位以下が確定し、クライマックスシリーズ(CS)進出の可能性も消滅した。それでも孤高のベテランは言う。
「1番(の目標)は勝つことに変わりはない。上位を狙う相手と戦うわけだから、勝つことが今のチームに必要だと思うので。そのなかでファンに楽しんでもらえたら。優勝争いを迎えられない悔しさ、申し訳なさはあります。負けているということはこっちが活躍できていない。シンプルに勝負事に負けている悔しさですよね。でも明日も試合があるし、いいプレーができるように。毎日がこの繰り返しかなというところですね」
お立ち台で“異例”の呼びかけ「嬉しすぎる人は今日は寝なくて大丈夫です」
ファンのためにいいプレーを見せ、戦いに勝つことこそプロ野球選手の使命。優勝戦線から外れてしまったが、同じ気持ちで戦い続ける。栗山はお立ち台で声を張り上げた。
「今日の僕のホームランは喜んでもらえたでしょうか?」。湧き起こる大歓声。ベルーナドームに響き渡ったコール&レスポンス。「嬉しすぎる人は今日は寝なくて大丈夫です。また明日も頑張りますんで、応援よろしくお願いします」。
異例の呼びかけでファンを楽しませた。通算2145安打を誇る孤高のバットマンは心地よい大歓声を浴びた。明日からの戦いに勝つために――。