元阪神4番、“転身”後に直面する資金繰り問題 選手は無給でバイト…第2の人生で描く夢

元阪神・濱中治氏【写真:山口真司】
元阪神・濱中治氏【写真:山口真司】

濱中治氏は和歌山・田辺市を本拠地とする独立L「和歌山ウェイブス」でGMを務める

 元阪神、オリックス、ヤクルト外野手で野球評論家の濱中治氏は2022年5月、関西独立リーグ・和歌山ファイティングバーズのGMに就任した。出身地の和歌山・田辺市を本拠地とするチームで、地元への恩返しの思いで引き受けたという。2022年12月からは名称が和歌山ウェイブスに変わったが、その役割は選手指導よりもチーム運営がメインで、スポンサー集めなどにも奔走している。さらには小中学生にも目を向け「ウェイブスのジュニア化も考えたい」と話した。

 2011年限りで現役引退した濱中氏は、2015年から古巣・阪神にコーチとして復帰。2015、2017、2018年は2軍、2016、2019年は1軍で打撃コーチを務めた。リーグ3位の2019年は、東京ドームでのクライマックスシリーズ・ファイナルステージで巨人に敗れた第4戦(10月13日)後に、チームの打撃不振の責任を取る形で自ら退任を申し入れたが「この5年間はとても勉強になりました」という。

 2020年からは野球評論家としてネット裏で精力的に活動中だが、それに加えて2022年から兼務しているのが和歌山ウェイブスのGMだ。「関係者の方から『ぜひ、力を貸してほしい』と言われて初めて僕はそういうチームが地元(和歌山・田辺市)にあることを知ったんですけど、地元に貢献したい思いもあったので受けさせてもらいました」。独立リーグはまだまだ発展途上。「選手を見るよりもスポンサー集めとか球団の運営の方に関わっている感じです」と話す。

「やはり資金繰りが大変なんでね。選手もバイトしながら無給でやっていますから。何とかして給料を出せるシステムを作れたらいいんですけど、そこまでまだちゃんとできていないので……」。選手の待遇改善を目指し、濱中GMも忙しく動いているわけだ。もちろん、ウェイブスからNPB選手を出すのも目標の1つだ。俊足で巧打好守の小川佐和外野手はプロも注目する選手。「1人でも(ドラフトに)かかったら、いろんな流れも変わってくると思うんで」と期待している。

目指すチームのジュニア化「小中学生の指導をもっとやっていければ」

 さらに濱中氏はこんなことも口にした。「いずれは小学生や中学生の指導をもっとやっていければと思っています。特に小学生への指導って一番重要だと思う。打つにしても投げるにしても基礎ができる時期なのでね。どんな形でも野球に恩返しできればいいなと思っています。和歌山ウェイブスも、もっと発展させたいですし、このチームのジュニア化もさせたいと考えています」。

 その構想には教員の時間外労働など、働き方改革による中学校の部活動事情も関係している。「中学校の部活動自体がなくなっていく時代になってきている。そこに和歌山ウェイブスのジュニアチームがあって、中学校で部活がなくなった子の受け皿になれれば……。ここにも野球ができるチームがあるよってね。入ってくれる子もいると思うので作っていきたいなと考えています。協力してくれる企業さんもたぶん多いと思うのでね」。

 現役時代の濱中氏は魅力あふれる長距離砲だった。右肩故障に見舞われながらもファンの声援にも支えられ、精一杯プレーした。その礎は小学3年から高校3年まで毎日続いた父・憲治さんとの練習が築いた。野村克也氏、星野仙一氏、田淵幸一氏らから多くのことを学び、吸収した。引退後は阪神でコーチを経験し、指導者としての引き出しも増やした。今は野球評論家として、和歌山ウェイブスGMとしての業務に全力を尽くしている。

 現在46歳。この先、再びプロ野球の世界に戻ることも考えられるところだろう。「それは縁の話なんでね。そういう機会をいただけるなら、またやってみたい気持ちもありますけど、こればかりはやりたいですといって、やれる世界ではないですから」と話したが、それも含めて野球人生はこれからが本番かもしれない。持ち味だった滞空時間の長いホームラン。まだまだ一発長打の可能性も秘めている。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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