指定難病との戦い…オリ安達が披露した3つの好守 13年間の現役生活に下ろした幕

オリックス・安達了一【写真:荒川祐史】
オリックス・安達了一【写真:荒川祐史】

指定難病の潰瘍性大腸炎と戦いながら、多くの人に勇気と感動を与えてきた

 オリックスの安達了一内野手が9月24日、13年間の現役生活に幕を下ろした。2011年のプロ入りからオリックス一筋13年、2016年に指定難病の潰瘍性大腸炎を患ってからも主力として奮闘を続けた。そんな安達は、卓越した守備力によって難しいプレーをこともなげに完遂してきた。その中から、印象に残る3つのシーンを振り返る。(成績は9月24日の試合終了時点)

 まずは、1試合で3度にわたって好守を見せた2020年7月12日の日本ハム戦。終盤に3度にわたって見事な守備を披露し、名手として大いに存在感を示した。まずは7回の先頭打者が三遊間の深い位置にゴロを放つと、安達は補給した直後、やや難しい体勢ながらボールは抜群のコントロールで一塁に矢の送球を放った。さらに1死では、センター前に抜けようかという当たりを軽やかなフィールディングで好捕。すぐさまボールを持ちかえ、鮮やかなスナップスローで打者走者をアウトに。連打を浴びて無死一、二塁のピンチに陥ってもおかしくなかった展開を2死走者なしとした。

 8回2死でも美技は光る。二遊間の真ん中に飛んだ打球に追いつき、1回転しながら一塁へ送球。流れるような一連の動作でまたしても安打性の打球をアウトにしてみせた。1試合で3度の好守を見せた安達選手の“猛守賞”が、ファインプレーが飛び出すたびに拍手と感謝の意を示した山本由伸投手の完投勝利を呼び込む試合となった。

周東が盗塁を企図…判定が覆りアウトに

 さらに2020年7月17日には、ベテランらしい好守を披露した。3回2死一塁という状況で、一塁走者の周東佑京内野手がスタートを切る。若月健矢捕手が矢のような送球を見せ、際どいタイミングで遊撃の安達へ。安達は一切の無駄を省いた動きを見せ、周東の足がベースに達するよりも、わずかに早いタイミングでタッチに成功する。

 際どいプレーとなったがゆえに、グラウンド上での判定はセーフとなった。しかし、リクエストの結果、判定が覆ってアウトに。スローでないと判別が難しいほどの際どいプレーでアウトをもぎ取った、咄嗟の判断力と高いタッチの技術が光る場面だった。

 最後の守備は昨年10月9日のソフトバンク戦だ。2点リードの7回2死一、二塁という場面でセンター前に抜けようかという打球をダイビングキャッチで好捕。倒れ込みながらの捕球で、二塁でアウトを取るのは難しい状況だった。ここで安達がグラブトスを試みたところ、グラブは左手から外れてしまい、ボールと共に二塁方向へ飛んでいく事態となった。

 そんな状況だったが、送球は無事に二塁へ送られてアウトに。安達の機転の利いたプレーによって見事にピンチを脱すると、打線はその裏に2点を追加。オリックスは試合の主導権を完全に握り返し、そのままリードを保って勝利を収めている。

 今年9月24日に行われた引退試合でも慣れ親しんだショートで軽快な守備を見せ、現役最後の打席では全力疾走で内野安打を記録した。難病と戦いながら36歳まで現役を続け、苦しい時期から黄金期に至るまでチームを支え続けた36歳。プロの舞台で酸いも甘いも噛み分けた名内野手が残した、堅実かつ美しいファインプレーの数々は、グラブを置いた後もなお、多くのファンの記憶と心に残り続けることだろう。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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