脱勝利至上主義も「成長を止めている」 全国未勝利→日本一に辿り着いた“2度目の改革”
今夏全国初優勝…「堺ビッグボーイズ」小学部が次に見据える“新根性論”
野球界の“流れ”に柔軟に対応し、日本一を手にした。大阪・堺市で活動する小学硬式野球の「堺ビッグボーイズ」小学部は、今年8月に行われた「第55回日本少年野球選手権大会」で初優勝を飾った。チームの転機となったのは「2度目の少年野球改革」だった。Full-Countでは小学生・中学生の各野球カテゴリーで日本一を成し遂げた経験を持つ指導者に取材し、子どもたちの成長を促すポイントを探っていく。
ボーイズリーグの名門として長年活躍する「堺ビッグボーイズ」だが、小学部は意外にも昨年まで全国大会未勝利だった。今夏は「悲願のV」とも思えたが、GMを務める瀬野竜之介氏は「小学チームが勝利するための作戦はあえて立てずに、選手たちの自力で勝てたことに意味がある。子どもたちの頑張りに感服しています」と、ナインたちを称えた。
チームは2009年から「脱勝利至上主義」を掲げ、上のレベルでも活躍できる育成重視のチーム運営に転換。罵声、怒声、効率の悪い長時間練習などを排除し、子どもたちが野球を楽しみ、成長できる環境作りに専念した。強豪チームの方針転換に賛同し、これまで以上に多くの子どもたちが足を運び、選手寿命も長くなったという。
近年は「エンジョイベースボール」も浸透し、野球界にも変化が見られるようになったが、一方で弊害もある。「野球を楽しむ」というフレーズが先行したことで、「楽な野球」と間違った解釈をする指導者や子どもたちが生まれているという。
2度目の改革を行った瀬野GM…子の変化に対応しつつ「指導者の資質が問われる」
子どもたちの将来を守ることはもちろん必要だが、野球をやるうえで本当に大切なものがあるのではないか――。ここ数年で瀬野GMも違和感を覚えるようになっていた。
「私自身も『目先のことより将来』という考えは変わらない。ですが、その言葉が成長を止めているのではないか。ある試合で負けた時に、子どもたちの表情がどこかぼんやりしていた。悔しさを出して泣けばいい、わけじゃないが、受け止め方はすごく大事だと感じました」
さらに、こう続ける。「困難を乗り越える力は必ず必要になる。目の前の勝利に執着させることを、どう引き出すことができるか。そういった意味では、試合のなかで乗り越えて勝つ強さは求めるようになってきました」
有無も言わさず猛練習で鍛え上げる野球から、将来を見据えた育成重視の指導法と変化を遂げてきた堺ビッグボーイズ。次なるステップは暴力も罵声もない“新根性論”とみている。「1周回ってではないが、今の時代にも必要な部分はあった。子どもたちの変化に対応しながら、指導者の資質が問われると思います」。あくなき挑戦を続ける瀬野GMとチームを率いる高曽学監督は、今月21日からの「日本一の指導者サミット」に出演予定だ。
今夏日本一…堺ビッグボーイズ小学部の指導・練習法を紹介!
Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、今月21日から5夜連続でオンラインイベント「日本一の指導者サミット2024」を開催します。小学生・中学生の各野球カテゴリーで全国優勝経験がある全11チームの監督を招き、日本一に至るまでの指導方針や独自の練習方法について紹介していきます。参加費は無料。登場予定チームなどの詳細は以下のページまで。
【日本一の指導者サミット2024・詳細】
https://first-pitch.jp/article/coaching-methods/20240930/8628/
【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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