退任する西武・渡辺監督代行…沈黙の7秒間に秘められた“決意” ライオンズを愛した59歳
1日の本拠地最終戦後のセレモニーでファンに“謝罪”
西武は9日、渡辺久信監督代行の退任を発表した。兼務していたゼネラルマネジャー(GM)職も退くことになった。ファーム監督の西口文也氏が1軍監督に就任する。
渡辺監督代行は1日に行われた日本ハムとの本拠地最終戦後のセレモニーで、満員のファンの前で挨拶。冒頭で「ファンの皆さんには本当に悔しく、辛い思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。GMそして監督代行として責任を感じております」と“謝罪”していた。
この日の試合前、渡辺監督代行は「スピーチの内容を考えているのか?」と問われると「考えていないよ。そもそもスピーチなんてものじゃなく、挨拶だよ」と笑った。続けて「まずはファンの皆さんに謝ります。ちゃんと謝らないと」と語った。その言葉通り、セレモニーでは真っ先にファンに頭を下げた。
挨拶では「41年前に18歳で西武ライオンズに入団して、ほとんどの期間をライオンズとして戦ってまいりました」と語り、約7秒間沈黙した。どこか重苦しい時間だった。スタンドからは「辞めるな!」の声が飛び交っていた。
そして「私は誰よりも西武ライオンズを愛しています。そして、ファンの皆さんも引き続きライオンズ愛で選手の後押しをしてほしいです。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。来年もまたよろしくお願いします」と一気に話して挨拶を終えた。球場内に大きな拍手が鳴り響いた。
「こういう状況の中でも、たくさんのファンが応援してくれた」
進退に関する発表は全日程終了後というのがチームのスタンス。渡辺監督代行はおそらく、すでに職を退く決意を固めていたのだろう。そして本当はファンに直接、謝罪とともに退任の意思を伝えたかったのではないだろうか。
チームは球団ワーストを91敗を喫するなど屈辱のシーズンを送った。それでも本拠地の左翼スタンドは最後の試合まで西武ファンで埋め尽くされていた。「こういう状況の中でも毎日、たくさんのファンが応援してくれた。本当にありがたい」と語っていた渡辺監督代行。5月下旬ながら、すでに挽回が厳しい状況から指揮官を引き継いだ。とはいえ最下位という結果に現場のトップが“責任”を取るのは勝負の世界では仕方のないことともいえる。
死球禍など選手を守るためには、真っ先に鬼気迫る表情でベンチから飛び出した。一方でふがいないプレーの選手には強い言葉で奮起を促した。勝負に厳しく、選手に優しかった。ファンに愛され、ライオンズを愛した59歳がユニホームを脱ぐ決断を下した。
(湯浅大 / Dai Yuasa)