衝撃「81.00」デビューの“苦悩” 育成左腕「負けちゃダメ」…巨人・浅野と交わした約束
オリックス・育成1位の寿賀弘都…衝撃の「81.00」からスタート
失意の中で原点を見つけた。オリックスの育成ドラフト1位・寿賀弘都投手が甲子園に出場した高校時代を思い出し、投球の自信を取り戻した。「ようやく防御率が1桁台になりましたよ。YouTubeで自分の映像を見て、甲子園で投げていた時の気持ちを思い出して投げるようにしたら、0点で抑えられるようになりました」。人懐っこい笑顔で明かしてくれた。
寿賀は香川県出身。英明高ではストレートとスライダーを武器とする左腕であり、4番を任される外野手との“二刀流”として活躍。3年時に春夏連続して甲子園出場に導いた。前年のドラフトで高松商から巨人にドラフト1位入団した浅野翔吾外野手とは中学時代に高松リトルシニアでバッテリーを組んでいたこともある。
甲子園では春に3回戦で作新学院(栃木)に9回逆転負け。夏の甲子園大会は1回戦の智弁学園戦(奈良)に延長10回タイブレークでサヨナラ負けを喫したが、打者に向かっていく姿勢がスカウトから高い評価を受けた。
しかし、プロ入り初の公式戦では“最悪”のスタートとなった。5月30日のウエスタン・リーグ中日戦(杉本商事BS舞洲)で4番手として登板。先頭を四球で歩かせた後、3連続長短打で2失点を喫した。その後は四球の後、空振り三振を奪ったところで降板を告げられた。1死を取っただけで、27球。3安打2四球で自責点3。防御率81.00のデビュー戦だった。
「プロでは悪い想定ばかりして、ピンチでも弱気になる自分がいました」
悔しい表情を浮かべながら「プロの凄みを痛感しました。マウンドでフワフワしていたというか、ピンチでビビっていた自分がいました」と心境を吐露する。「1年目なので、防御率は気にしてはいなかった」という寿賀だが、プロのマウンドでの自分を見詰め直すことに時間はかからなかった。高校時代の自身の投球をYouTubeで見直した瞬間、答えは出てきたという。
「高校時代は、常に打者に向かって行くという気持ちで投げて抑えてきました。でも、プロでは悪い想定ばかりして、ピンチでも弱気になる自分がいました」
高校時代の気持ちに戻って、思い出した“原点”もあった。先輩から受け継いだ「敵は我にあり」という言葉だった。「打者に負けてはいけませんが、その前に自分に負けちゃダメなんです。その言葉をずっと大事にしてきたんです」。弱気になる自分を変えたことで、投球内容も大きく変わった。
以後の3試合では各1回を投げて、自責点は0。初登板の自責点3が大きく響き、防御率は一気に改善できないものの、8.10にまで下げた。「今は0点で抑えることを頭に浮かべながら投げています。走者を出さないことが一番なのですが、意識が変わったことで走者を出しても要所で抑えることができるようになりました」と胸を張る。
「プロで活躍して一緒に、地元の香川を盛り上げよう」と約束した浅野は、終盤の活躍で巨人の4年ぶりの優勝に貢献した。「次は僕が頑張る番です」。寿賀の2年目への挑戦が、秋の教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」で始まっている。
(北野正樹 / Masaki Kitano)