新人王候補のドラ1はもっと勝てた? 屈指の高指標も泣かされた“貧打”…「.212&350」

西武・武内夏暉【写真:小林靖】
西武・武内夏暉【写真:小林靖】

2桁勝利を挙げた投手の数に、直近4シーズンで大きな変化はなかった

 2024年のパ・リーグでは、11投手が2桁勝利を挙げた。今回は各投手が記録した各種指標から、どのような投球内容をだったのか、データの観点から考察する。

 ソフトバンクの有原航平投手は日本球界復帰2年目の今季、チームトップの182回2/3を投げて14勝を挙げ、2019年以来5年ぶりに最多勝を手にした。同僚のリバン・モイネロ投手も先発転向1年目で11勝。防御率1.88で、最優秀防御率に輝いた。

 日本ハム・伊藤大海投手は4年目の今季、自己最多の14勝(5敗)防御率2.65をマーク。最多勝と最高勝率の投手2冠に輝いた。ロッテ・小島和哉投手が自己最多の12勝。佐々木朗希投手は故障による長期離脱があったが、18登板で10勝をマークした。

 楽天・早川隆久投手は自身初の開幕投手を務めた他、キャリア初の規定投球回到達と2桁勝利を達成。藤井聖投手は今季から先発ローテの一角に加わり、自身初の2桁となる11勝を記録した。

 2023年ドラフトで3球団が競合した西武・武内夏暉投手は1年目から10勝、防御率2.17。初の開幕投手を務めた今井達也投手も2年連続2桁勝利を達成し、最多奪三振のタイトルを獲得した。日本ハム・加藤貴之投手は9年目にして初の2桁勝利。山崎福也投手も移籍初年度に2年連続の2桁勝利を記録した。

QS上位2人はモイネロ&有原…抜群の安定感で鷹を支えた

 11人の内、「クオリティスタート率(QS率)」(6回を自責点3以内)が60%を超えた投手は9人。その中でも有原は80.8%で2番目に高かった。モイネロは有原を上回る84%。安定感抜群の2人の存在が、ソフトバンクの強みの1つだった。

 今井が80%、武内が76%と、西武の2人がいずれも高い数値を記録。ともに10勝止まりだったのはリーグワーストの打率.212、350得点にとどまった打線の不振が大きく影響したと考えられる。一方で、伊藤のQS率は69.2%で、6番目だった。しかし、9月以降は登板5試合全てでQSを達成して4勝を上積みした。小島のQS率は64%で、伊藤に次ぐ7番目。それでもレギュラーシーズン最後の3試合はいずれも7回を投げて1失点以下だった。

 次に、本塁打を除くインプレーになった打球が安打になった割合を示す指標「被BABIP」に目を向ける。被BABIPは一般的に.300が基準値とされているが、11人の中で.300以上の被BABIPを記録したのは、早川と藤井の2人だった。安打を打たれる割合を示す被BABIPの全体的な低下は、投高打低の環境を如実に示すものといえる。

 与四球率も注目すべき傾向が出ている。11人の内10人が2点台以下で、与四球率0.92の加藤を筆頭に1点台以下の投手が7人いる。ただ1人3点台だった今井に関しても、今季はキャリア平均の数字(4.76)を1点以上良化させた。

 奪三振を与四球で割って求める、制球力や投手としての能力を示す「K/BB」も、7人が優秀とされる水準「3.50」を上回った。被安打と与四球の双方が減少したことは、1イニングで出した走者の平均を示す「WHIP」にも影響を及ぼしており、10人が優秀とされる1.25を下回っている。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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