球史に刻まれる“外弁慶シリーズ” 理由を専門家が分析…鍵を握る第6戦「不思議です」

DeNA・三浦大輔監督(左)とソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:小林靖、冨田成美】
DeNA・三浦大輔監督(左)とソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:小林靖、冨田成美】

ベイスターズOBの野口寿浩氏が分析

 今年の日本シリーズは、横浜スタジアムで行われた第1戦、第2戦はソフトバンクが連勝。みずほPayPayドームで行われた第3戦?第5戦はDeNAが3連勝し、3勝2敗として日本一奪取へ王手をかけた。全試合でビジターチームが勝利を収め“外弁慶シリーズ”となっている理由はどこにあるのか。

 現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、今年とは真逆の“内弁慶シリーズ”を戦った経験がある。阪神在籍時代の2003年にダイエー(現ソフトバンク)と対戦した日本シリーズだ。このシリーズでは、ダイエーが本拠地・福岡ドーム(現みずほPayPayドーム)で行われた第1戦、第2戦、第6戦、第7戦に全勝。阪神も本拠地・甲子園球場で行われた第3戦~第5戦に全勝し、結果的にホームゲームの数の差でダイエーが日本一に輝いた。

 野口氏は「あの時の阪神は、甲子園に戻った第3戦からムードが変わり、全て1点差で3連勝。特に第4戦で金本(知憲)さんが延長10回に放ったサヨナラホームランは忘れられません。一方、福岡ドームは“逆甲子園”という感じで、すごく嫌な雰囲気でした。球場とファンが雰囲気をつくり出してくれたのだと思います」と回想する。「そういう意味で、今年の日本シリーズの展開は不思議ですね」と首をひねった。

 そんな中でも、野口氏は「両チームのエース級2人の先発がずれて、直接対決とならなかったことが原因の1つだと思いますよ」と指摘する。ソフトバンクは順当に、第1戦に有原航平投手、第2戦にリバン・モイネロ投手が先発して試合をつくり連勝。一方、DeNAのエース・東克樹投手は、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦で左太もも裏を痛めたため、中16日を空けて第3戦に先発し7回1失点。ポストシーズンに入ってから絶好調のアンソニー・ケイ投手も、巨人とのCSファイナルステージ第6戦の先発していたため、第4戦先発に回って7回無失点の快投を演じた。“左に弱い”とされるソフトバンク打線を、左腕2人が翻弄した。

CSファーストステージ、ファイナルステージも全試合敵地で勝ち抜いた

 また「理由はわかりませんが、DeNAが今年のレギュラーシーズンで、ビジターゲームに強く、ホームゲームに弱かったことも“外弁慶シリーズ”に関係しているのかもしれません。全試合敵地で行われたCSのファーストステージ、ファイナルステージを勝ち上がってきた経緯もありますからね」と野口氏は言う。

 DeNAはセ・リーグ3位に終わったレギュラーシーズンでは、ホームゲームに限ると34勝37敗1分(勝率.479)で3年ぶりに負け越し。対照的にビジターゲームでは37勝32敗2分(勝率.536)で、2013年以来11年ぶりに勝ち越した。

“敵地”に強い流れが日本シリーズでも続いているということか……。「しかし、それはDeNAにとって“負のデータ”になってしまいますね」とベイスターズOBでもある野口氏は、複雑な表情を浮かべた。ちなみに、ソフトバンクはホームゲーム49勝21敗2分(勝率.700)、ビジターゲーム42勝28敗1分(勝率.600)と万遍なく勝ってパ・リーグで優勝した。

 ただ、第6戦が行われる2日の横浜スタジアムは“雨予報”で、もし順延となれば、第6戦が東VS有原、第7戦がケイVSモイネロのエース級直接対決となる可能性も出てくる。典型的な“外弁慶シリーズ”として球史に刻まれることになるかどうかは、まだまだわからない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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