指名漏れ清原正吾に「どうしてもっと早く」 4安打に慶大指揮官は苦笑…遅すぎた“開花”

早大戦で本塁打を放った慶大・清原正吾【写真:加治屋友輝】
早大戦で本塁打を放った慶大・清原正吾【写真:加治屋友輝】

左翼席中段へのリーグ戦3号ソロを含め4打数4安打

「今季開幕からこれくらい打っていれば、今頃.350くらいの打率をマークしていて、ドラフトでも指名されていたのではないでしょうか」

 慶大・堀井哲也監督は思わず、ジョークを飛ばしながら苦笑いを浮かべ、「ドラフトって、今からもう1回やりませんかね?」とまで付け加えた。プロ志望届を提出しながら10月24日の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で指名されなかった慶大・清原正吾内野手(4年)が9日、東京六大学野球秋季リーグの早大1回戦に「4番・一塁」で出場し、リーグ戦3号ソロを含め4打数4安打1打点の大活躍を演じたのだ。

 これまでには見せたことのない打撃内容だった。初回、チームが1点を先制した後、2死走者なしで第1打席を迎えた清原は、早大のエース・伊藤樹投手(3年)に対しカウント1-2と追い込まれ、内角高めのストレートに詰まらされたが、しぶとく右前に落とすヒット。4回1死走者なしの第2打席でも、まるで再生動画のように、内角球に詰まらされながら右前へ運んだ。

 そして2-0とリードして迎えた6回。1死走者なしで第3打席に立つと、伊藤樹が外角低めを狙ったストレートが真ん中へ来たのを見逃さず、左翼席中段へ豪快に放り込んだ。さらに8回の第4打席では、早大2番手・越井颯一郎投手(2年)の外角高めの球に反応し、この試合3本目の右前打を放った。

 ドラフト指名から漏れた清原の打撃は、1発長打を期待できるパワーはあるが、厳しい内角球をうまく打ち返せず、外角のボールになる変化球にもバットが止まらないところが弱点といわれていた。内角を攻められているうちに、体が開く癖がついてしまっていたからだ。

 しかし、この日の試合後、敵の早大・印出太一捕手(4年)は「内角球に詰まりながらも逆方向へヒットにできたということは、体が開いていなかったということです。そういうバットの出し方、踏み込み方ができていた。それを踏まえて、次にどう崩すかを考えなければ」と語った。慶大の試合は、10月20日の法大2回戦に敗れて以来3週間ぶりだったが、その間に、致命的に見えた弱点を克服してきたことになる。清原自身は「ボールの内側からバットを素直に出すことを意識して練習してきました。僕にとって(右前打3本は)価値のある3本でした」とうなずいた。

大舞台での強さは「父親のDNA」、これまでの低迷は「観客が少なかったから」

 堀井監督は「清原本人は多くを語りませんが、彼はこの3週間、相手の分析と自分の打撃の修正をかなり重ねてきましたよ」と称える。試合前の段階で今季打率は.200と低迷していたが、4打数4安打で一気に.265に跳ね上がった。

 2万6000人の観客が詰めかけた伝統の早慶戦の舞台で、大学入学後最大の活躍を演じてみせた清原。大舞台での強さの秘訣を聞かれると、「父親のDNAではないですかね」と通算525本塁打を誇る父・和博氏を引き合いに出して笑わせた。堀井監督が試合中に「どうして(ドラフトの前に)もっと早く打たなかったんだ?」と冗談めかして話しかけると、清原は「(今までは)観客が少なかったからですかね」とおどけたという。

 中学時代はバレーボール部、高校時代はアメリカンフットボール部に所属し、野球から離れていただけに、慶大進学と同時に硬式野球を始めた時点でのハンデは大きかった。そこからの清原の成長スピードは驚異的だ。

 今後の進路の表明は、今季全日程終了後になりそうだが、底知れぬ潜在能力をまたもや垣間見せた。もちろん決断するのは本人だが、仮にプロ入りの夢をここで諦めてしまうのであれば、もったいない気がする。そう思わずにはいられない活躍ぶりだった。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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