小学生の投球動作は「野球人生を左右する」 名門クラブが重視する“保護者への指導”
多賀少年野球クラブの辻正人監督「勝手にいい投げ方になることは絶対にない」
野球の基本ともいえる「キャッチボール」は、選手寿命を長くするための重要なスキルの1つ。投げる動作は簡単そうに見えるが、正しく教えられる指導者は意外に少ない。Full-Countでは少年野球の現場をよく知る専門家に、“投動作”指導の注意点や練習法について取材。全国大会連覇の経験があり、投げ方指導にも定評がある滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が、少年野球界で注意すべきポイントを語ってくれた。
多賀少年野球クラブを立ち上げ36年が経過しても、辻監督の探求心が尽きることはない。当初は勝利を求め戦略や戦術重視のチーム作りを行っていたが、「個の育成」へと方針転換。小学校を卒業し、上のカテゴリーでも野球を続けるためには、正しい基礎を身に付ける必要がある。そのなかで最も重要なのが投げる動作だという。
「昔はどんな投げ方でも球が速ければ評価されていた。投げ方はあくまでニュアンス。それは当時の指導者も理論や技術を学ぶことがなかったから。私もそうでした。誰もが『キャッチボールは基本』と言いますが、それが一番難しい。どれだけ打力があっても、送球に不安がある選手は選択肢が狭まる。大げさですが、投げる動作は野球人生を左右するかもしれません」
投げる動作は個々の環境により大きく変わってくる。物心がつきボール遊びを始める頃には、ある一定の癖がつくという。肘が前に出る“ダーツ投げ”、腕だけの力で投げる“手投げ”など様々だ。少年野球に入部する際にスムーズな投げ方ができている子は、「両親がすごい勉強しているか、良い指導者に教えてもらっているか」だという。
親子のキャッチボールでは保護者にも指導「それを子どもがマネします」
辻監督の持論は「勝手にいい投げ方になることは絶対にないのが大前提」として、子どもたちと向き合っている。チームとしては腱を使って投げ、怪我のリスクも軽減する「バネ投げ」を取り入れたことで、“投動作”は各段に上がったが「チームの指導だけでなく保護者の協力や理解は必要になる」と指摘する。
例えば、入部した際に親子でキャッチボールする機会があると「お父さん、その投げ方はダメですよ」と、まずは保護者に投げ方を指導する。正対したまま“手投げ”で投げる場面があり「それを子どもはマネします。肩を入れて回転で投げましょう」と指導。バネ投げも動画を撮影してもらい、自宅でも反復できる環境を作っている。
チームのOBには楽天でプレーする則本昂大投手がいるが、在籍当時と投げ方はほとんど変わっていないという。球界を代表する投手となり辻監督も鼻高々と思いきや、「私は全く教えていないというか教えられなかった。当時の私は理論や指導力もなかった」と振り返る。両親が投球フォームなど動画で撮りため、プロ野球選手の投球フォームをマネしながら、家族が一緒になり自宅練習で土台を作っていったという。
「指導者が勉強するのはもちろん必要。それだけの責任があります。今は情報が簡単に得られる時代になり、指導者の見る目も養われてきましたが、まだ足りない。チームはもちろんですが、保護者もどれだけいい投げ方に導いていけるか。グラウンドよりも家で過ごす時間のほうが圧倒的に多い。その辺りも少し意識していくと、投げ方で苦労する子は減っていくと思います」
多賀少年野球クラブでは指導者と保護者が一緒になり、子どもたちの成長をサポートしている。辻監督は12月16日から開催される「投球指導week」に出演予定。指導するうえで難しい“投げ方”のヒントはどこにあるのか。球児を持つ保護者の悩みを解決してくれるはずだ。
辻正人監督も登場…少年野球の投げ方指導に役立つ練習法を紹介!
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(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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