3度目の戦力外に「またか」 気持ち途切れ2か月の葛藤…妻に言えなかった“2文字”
鷹・古川侑利が現役引退を発表…11年で4球団を渡り歩いた
2か月の“沈黙”を経て29歳は心を決めた。ソフトバンクから戦力外になっていた古川侑利投手は1日、自身のSNSで現役引退を発表。自身3度目の戦力外通告を受けた10月7日には「現役を続ける方向で考えて行きたい」と話していたが、ユニホームを脱ぐことを決めた。葛藤が続いた約60日。揺れ動いた心境を赤裸々に語ってくれた。
「ぶっちゃけた話をしたら、結構気持ちが切れたっていうのもありましたね。正直、3回目となると、『またか』ってなった部分もありました」
戦力外通告を受けた後は、現役続行を目指してトレーニングを重ねた。他球団から声がかかることを信じ、時には4球団を渡り歩いた人脈を頼りに、自ら球団の編成に連絡をすることもあったという。
「他球団の編成の方とかにも探りをいれてもらったりもしたんですけど、『ちょっとね……』みたいな感触だったので。来年は30歳になりますし、『やっぱり年齢がね』っていう感じで。やっぱり厳しいよなと思いました」
現役続行信じていた妻も「やめるならやめるで大丈夫だよ」
必死の思いも届かなかった。現役引退を決断したのは、通告から1か月が経った頃。「けっこう迷いましたね。『まだできるやろ』っていう自分と(現実と)の葛藤がすごかったです」。現役続行を応援してくれていた妻には、自身から「引退」の2文字を言い出すことができずにいた。
「『まだパフォーマンスを出せるのに終わるのってもったいない』って応援してくれていたんですけど、奥さんも“それ”を受け入れはじめていて。『やめるならやめるで大丈夫だよ』って。そう言ってくれましたね。めっちゃいい奥さんだなって」
2013年ドラフト4位で楽天に指名され、プロの扉を開いた。巨人、日本ハム、ソフトバンクと計4球団を渡り歩き、厳しい世界に11年間身を置いた。プロ生活は未練がないかといえばそうではない。
だが、引退を決断したからこそ気づけたものがあった。「知り合いの方に連絡した時に『そっか』っていう反応を聞いていたら、すごく応援してくれていたんだなってより思ったんです。辞めることになってから応援されたことを余計に気づいて、応援してもらえるってすごくいいなと。幸せだったなと思いました」。
決心したのは家族の存在があるから。30歳を迎える2025年は古川にとって節目の年になるだろう。多くの人の思いを背負い、新たな道へと進んでいく。
(飯田航平 / Kohei Iida)