野球離れ阻止へ「必要なのは底辺拡大」 アマ指導者が集結…一丸で届ける“球技の本質”

教室で野球の“楽しさ”を実感する子どもたち【写真:橋本健吾】
教室で野球の“楽しさ”を実感する子どもたち【写真:橋本健吾】

大学、高校、ソフトボールのトップ指導者らが埼玉・越谷市民球場で野球教室を開催

 野球人口拡大を願う一流の指導者たちが、団体の垣根を越え集った。7日に埼玉・越谷市民球場で大学野球、高校野球、女子ソフトボールの指導者が、地元の小学生を対象にした野球教室を開催。“野球離れ”に危機感を抱くアマチュア指導者たちが一丸となり、野球界の未来に向けた一歩を踏み出した。

 午前8時30分。グラウンドには140人を超える小学生が集まり白球を追いかけた。ウオーミングアップでは専門コーチから「正しいフォームを覚えれば、足は誰でも速くなるよ!」と、走り方から見直す本格的な指導がスタート。また、野球を始めたばかりの小学1、2年生にはテニスボールやスポンジバットを使用し、まずは野球の楽しさを伝えるなど、学年ごとに異なる指導を行った。

 今回のイベントの発起人は上武大でコーチを務め、社会人・深谷組のGMも務めた平原美亜(よしあ)さん。10年前に大学、高校、ソフトボールの指導者が集う「コーチ会」を結成し、“野球談議”に花を咲かせていたが、年を重ねるごとに話題は「未来を担う子どもたち」に変わっていった。

「当初は情報交換のような場所でしたが、10年の節目に何か野球界に恩返しができないかと。野球人口が減少するなか、一番必要なのは底辺の拡大。WBCの優勝や大谷翔平選手の活躍などでプロ野球は盛り上がっていますが、子どもたちが野球を選択してくれないと、野球人口の減少は止めることができない」

 平原さんら「コーチ会」の“熱意”を形にしたのが、競技人口増加に力をいれる「野球の街越谷」実行委員会の“ヤキュマチ”。これまでも子どもたちに野球の魅力を広げる様々なイベントを行っており、話はスムーズに進んでいった。

野球教室で指導を行う三科真澄さん(中央)【写真:橋本健吾】
野球教室で指導を行う三科真澄さん(中央)【写真:橋本健吾】

北京五輪ソフトボールで金メダルを獲得した三科真澄さんも参加

 グラウンドに集った指導者は亜細亜大、国学院大、中央大、立正大、桜美林大、共栄大などから総勢15人。純粋に野球を楽しむ小学生と触れ合うことで、指導者も学びも得た。

 その中でも、ひときわ大きな歓声を浴びたのは北京五輪ソフトボールで金メダルを獲得した三科真澄さん。競技の垣根を越え参加し「本当に勉強になりました。この後もどんどん野球が好きになってほしい。楽しいだけで終わらず、技術的にも感じてもらえればと思い全力で頑張りました」と、充実した表情を見せていた。

 三科さんも幼いころに野球の経験があり、通算206勝投手の江夏豊氏(元阪神)の野球教室などに参加。一流のプレーヤーを目の当たりにし憧れを抱いたという。「改めて子どもたちの伸びしろは無限大。そこに何かのきっかけがあれば興味も抱いてくれる。気づきを与えるのは大人の役目。私もその1つになれるよう今後も頑張っていきたいです」。

 大人たちが知恵を絞り、尽力をしたイベントは大盛況で幕を閉じた。平原さんは「野球の入口はこれが本来の姿だと思う。技術や勝利を求めるのも大切ですが、まずは誰もが楽しめること。野球人口減少はアマチュアの我々も危機感を持って取り組んでいかないといけない」と力を込める。小学生たちが笑顔でボールを追いかける姿に、野球の本質を改めて実感できた一日だった。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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