神宮で輝いたスーパー小6女子 男子相手にノーノー寸前…父が迫った野球への覚悟
四国ILジュニアの女子右腕・堀川緒夏は5回2死まで無安打の快投
全国選りすぐりの小学生たちが日本一の座を懸けて争う「NPB12球団ジュニアトーナメントKONAMI CUP 2024~第20回記念大会~」は大会2日目の27日、四国アイランドリーグ(IL)plusジュニアの女子・堀川緒夏(ほりかわ・しょか)投手(6年)が、6回制の試合で5回2死までノーヒットに抑える快投を演じた。快挙はならなかったが、4回2/3を1安打4四球無失点で勝利に導いた。
大会史上4人目、女子では初のノーヒットノーラン達成が間近に見えた。神宮球場で行われたくふうハヤテベンチャーズ静岡ジュニア戦に先発した右腕は初回、いきなり2四球で2死一、三塁のピンチを招いた。だが、ここを無失点で乗り切ると、2、3、4回は3者凡退で片づける。スピードガン表示は100キロ前後ながら、キレのいい速球で押し込み、クイックで投げたり、ゆっくり足を上げたりと、投球フォームに緩急をつけて相手打者を翻弄した。
「逃げない強気の投球が、堀川の身上です。練習試合の段階から先発投手2枚看板の1人で、信頼しています」と、かつて日本ハムでプレーした駒居鉄平監督。「立ち上がりは緊張で球が上ずっていましたが、初回を抑え切れたことに価値があると思います。3回で代えようと思っていたのですが、ノーヒットでは代えられないですよね。投球フォームに緩急をつけることは、われわれが教えたのではなく、むしろ、ああいうことができるからこそメンバーに選んだのです」と称賛した。
「(ノーヒッターを)意識するとコントロールが悪くなるので、気にしないようにしていました」と堀川。1点リードの5回、先頭打者に四球を与え、三振ゲッツーで2死を取った後にも、この日4つめの四球を与えた。続く9番打者に二遊間をゴロで抜ける初安打を献上。ここで交代を告げられ、68球の熱投に終止符を打った。
総人口3572人…高知県芸西村から飛び出したヒロイン
神宮のスタンドでは、総人口3572人(11月30日現在)の高知県芸西(げいせい)村の自宅から、父・太士(ふとし)さん、母・ももさん、中3の姉・朱希(じゅき)さん、中1の兄・奏斗(かなと)さんが、堀川の快投を見守っていた。
堀川が太士さんから野球の手ほどきを受けたのは、小1の終わり頃。当初、朱希さんと堀川はバスケットボールのチームに入っていたが、太士さんは「私が長男に野球を教えていたら、姉妹2人でグラブを持って『お父さんとキャッチボールしたい』と言ってきました。私は『本当に野球をやるなら、お父さんはおまえたちを“女の子”扱いはしない。練習はキツいし、厳しい言葉を使うが、それでもいいのか』と確認した上で、始めさせました」と振り返る。現在は芸西スポーツ少年団と、女子チーム「高知家リトルガールズ」を掛け持ちして、野球に熱中している。
投球フォームに緩急をつける技術は、奏斗さんからヒントを得た。奏斗さんは「僕もピッチャーをやっていて、球速が出ないのでよく打たれます。どうやって相手打者のバランスを崩すかを考えていた時に、妹が『どうやっているの?』と聞いてくれたので、あれこれ話しました」と明かす。
中学に進む来年、朱希さんが所属している中学生軟式女子野球チーム「高知家ガールズ」で野球を続ける予定。将来の夢は女子プロ野球選手。太士さんは「一方で、グラブ職人という夢もあるようです。用具の手入れはきょうだい3人の中で一番丁寧ですし、型にも革にもこだわりがあります」と目を細めた。
家族ぐるみで、小学生軟式野球最高峰の大会に出場するまで歩を進めてきた堀川。将来、どんな素敵な場所に行きつくだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)