“最少与四球投手”が指摘する制球力を乱す「ズレ」 投球フォームがバラけない直線練習
元阪神・秋山拓巳さんが小学生に制球力向上のコツを指導…鍵は軸足の踵
構えられたキャッチャーミットをめがけて投げても、なぜかコースがズレてしまう。コーナーへ正確に投げ分けたくても、なかなか上手くいかない。そう悩む少年野球の子どもたちへ「コントロールについてなら聞いて」と、2017年に12球団最少与四球数を記録した元虎戦士が胸を張った。昨シーズン限りで現役を引退し、1月から同球団のベースボール・アンバサダー(BA)に就任した秋山拓巳さんだ。
昨年末に行われた阪神タイガース×徳島インディゴソックス「Xmas野球教室 supported by徳島トヨペット」(12月20日・徳島県徳島市)で、陽川尚将さん、育成1位ルーキーの工藤泰成投手とともに講師を務め、「僕のことは知らないかもしれないけど、一応1億円プレーヤーになれたし野球は上手な方だと思うので、いろんなことを教えられたら」と挨拶すると、参加した小学生・中学生約60人に精巧なコントロールの秘訣を伝授した。
愛媛・西条高から2010年に入団。ストライクゾーンいっぱいにコントロールよく投げるストレートや変化球で打者を翻弄し、入団8年目の2017年には12勝、規定投球回に達した両リーグ投手で最少の与四球「16」をマークした。近年は右膝の不調に苦しんだが、狙ったコースにボールを正確に投げ込む制球力を生かし、14年にわたって戦い続けた。
当然ながら参加した球児たちは、各人各様のピッチングフォーム。しかし、どのようなスタイルの選手にも共通する、制球力アップの鍵があるという。それは下半身が常に「同じ踏み出し方をすること」と秋山さん。そのためにまず意識すべきは、軸足の踵(かかと)だという。
「大事にしてほしいのは、足を上げたときに踵が動かないこと。踵が動いて、つま先の向きが後ろ(センター方向)にズレると、投げる時の上半身の使い方も変わってきてしまう。踵が動かず、軸足が固定されていれば、そのまま前(ホームベースの方向)へ“真っすぐ”に出ていける。踏み出しを同じように、同じところに出すこと。そうすれば常に同じフォームで投げられます」
ホームベースへの直線で確認…軸足を固定し「踏み出しを同じように・同じところに」
投球の際に足を上げた反動で軸足が動いてしまい、コントロールにおける微小なズレを生んでしまう投手は「プロにもいる」と秋山さん。踏ん張る力が十分に備わっていない小・中学生ならば、なおさらそのリスクは高いだろう。それでも、少年野球の段階から意識しておくことで、制球力が改善し、自信を持ってボールを投げることに結びつきやすくなるのは間違いない。
さらに、上げた足を前にステップして体重移動を行う際、ステップの仕方が1球ごとに変わっていないかも意識すべきポイント。マウンドで投球練習を行う際には、踏み切り板、踏み込む足の着地点、ホームベースの3点を結ぶ直線をイメージし、実際に踏み切り板から着地点までラインを引いて、ズレを調整する方法を秋山さんは勧めた。
ただし、「踏み込む位置を一定に」というと、子どもたちはその“位置”ばかりを注視してしまいがち。秋山さんは「ストライクゾーンはもっと遠くでしょ。そこに1番集中しないと」と、学童なら約14~16メートル、中学生以上は18.44メートル先にあるホームベース上をめがけるようにアドバイス。その意識付けを促すために、ラインをマウンドの傾斜の先まで伸ばして引くのも一手だと説明した。
秋山さんは小学1年時から故郷・香川の「今津スポーツ少年団」で野球を始め、小学3年時に引っ越し先の「西条リトルリーグ」(愛媛)で本格的に投手を始めた。西条高時代まで徳島遠征は何度も経験したといい、球児たちにも「どこの高校行くん?」と気さくに声をかけていた。同じ四国で生まれた子どもたちの姿を見つめながら、約20年前の少年時代を懐かしんでいる様子だった。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
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