阪神20歳は「甘い考えが生まれたのでは」 名伯楽があえて「期待外れ」と指摘したワケ

阪神・門別啓人【写真:小林靖】
阪神・門別啓人【写真:小林靖】

“名伯楽”佐藤義則氏がイチ押し…阪神・門別啓人の課題と可能性

 2025年のNPBで躍進が期待される若手有望株は誰か──。かつてコーチとしてダルビッシュ有投手(現パドレス)、田中将大投手(現巨人)らを育て、名伯楽と呼ばれた野球評論家・佐藤義則氏の“イチオシ”は、プロ3年目を迎える弱冠20歳の左腕、阪神・門別啓人投手だ。プロ2年目の昨年はブレークの兆しを見せるも1軍の壁に跳ね返されたが……。同郷の先輩が感じた課題とポテンシャルとは。

「私が今年一番注目しているのは門別です。私自身が彼と同じ北海道出身ということもあって、今年こそ1軍で活躍してほしいと思っています」と佐藤氏。今年“こそ”と強調するのは、昨年もブレークの兆しを見せながら、し切れなかったからだ。

 2022年ドラフト2位で東海大札幌高から入団した門別は、1年目の9月に早くも1軍昇格を果たし2試合に登板。2年目の昨年は、1軍春季キャンプに参加すると、2月中旬の練習試合で自己最速の151キロを計測するなど、俄然注目を集めた。

「門別のピッチングは昨年の阪神の春季キャンプで一番の話題でした。勢いのあるストレートを右打者のインコースに投げ込めることが持ち味で、捕手の構えたところに、ほとんどコントロールミスをすることなく決めていました」

 中継ぎ要員として開幕1軍入りし、3試合(計4イニング)無失点。ついに5月3日の巨人戦(東京ドーム)で先発の機会を与えられたが、結果は3回6失点(自責点4)で、プロ初黒星を喫した。その後はなかなかチャンスをもらえず、唯一の1軍登板となった8月24日・広島戦(マツダスタジアム)も、5回2失点で敗戦投手となっていた。

 佐藤氏は「正直言って、期待外れでした。1軍では腕を力いっぱい振れず、若さが感じられませんでした。小手先のコントロールで抑えようとして、かえってストライクを取れなくなっていたように見えました。また、これは捕手にも責任があると思うのですが、本来のストレートが投げられていないとなった時、変化球ばかりになってしまったところも、私としては不満でした」と振り返る。

「小手先のことを考えるのは1軍で勝てるようになってからでいい」とエール

 若手成長株がチャンスを生かせなかったのは、なぜだろうか。「急に騒がれて、本人の中に『これくらいで抑えられるだろう』という甘い考えが生まれたのではないか」というのが佐藤氏の見立てだ。

「若い門別はスピードをどんどん上げていくべき段階です。小手先のことを考えるのは、1軍で勝てるようになってからでいい。腕を振らないと威力のあるボールを投げられませんし、コントロールを磨くこともできません」

 門別のプロ2年間の通算成績は、7試合(先発3試合)0勝2敗、防御率4.05。この若さで1軍の先発ローテの一角を勝ち取るのは、やはり容易なことではない。キャンプ、オープン戦で評価を上げ、自信をつけた若手が、実際の公式戦で結果を出せないケースは結構多い。門別もまた、1軍の壁に跳ね返されたといえるかもしれない。

 阪神の先発投手陣のレベルは、今年も引き続き高そうだ。昨年13勝3敗、防御率1.83をマークした才木浩人投手を筆頭に、手術による2年間のブランクから復活した高橋遥人投手、大竹耕太郎投手、村上頌樹投手、西勇輝投手、ジェレミー・ビーズリー投手ら、豪華な顔ぶれがそろう。それでも、「門別はそこに割って入る可能性を秘めている」と佐藤氏。同郷の先輩として、厳しさも込めてエールを送っている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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