「シーンとなった」寮の食堂 届かなかった春夏初の甲子園…痛感した「あと一歩の壁」

取材に応じるつくば秀英の吉田侑真主将【写真:尾辻剛】
取材に応じるつくば秀英の吉田侑真主将【写真:尾辻剛】

選抜出場32校決定…つくば秀英は春夏通じて初の甲子園出場ならず

 期待を胸に待っていた吉報は届かず、つくば市内の野球部寮は静まり返った。3月18日に開幕する第97回選抜高校野球大会の出場校を決める選考委員会が24日、大阪市内で行われ、出場32校が決定。神宮大会枠を含め「関東・東京」は7枠あったが、甲子園初出場を狙ったつくば秀英(茨城)は選出されなかった。

 部員34人はユニホームに着替えて寮の食堂に集合。吉田侑真主将が「期待していた部分はあった」というように昨秋の茨城大会優勝、関東大会ベスト8で候補校の1校ではあった。だが、つくば秀英の名前は呼ばれず「シーンとなった」という。

 ナインとは別にグラウンドで1人、その瞬間を待っていた桜井健監督は「この立場って凄く微妙な感じで待つんですね。まあ仕方ないです。補欠校になっただけでありがたい。でも、あと一歩の壁が本当に大きいですね」と複雑な表情。練習に出てきた選手たちを本塁付近に集めると「周りは惜しかった、よく頑張ったと言うかもしれない。でも、足りなかったあと一歩から目を背けずに、夏につくば秀英初の甲子園をみんなで勝ち取りにいきたい」。27歳の若き指揮官は自分にも言い聞かせるような強い口調で呼びかけた。

 昨夏も茨城大会決勝で敗退し、あと一歩で逃した甲子園。新チームで迎えた昨秋は茨城大会を制して秋の関東大会に初出場した。1回戦で拓大紅陵(千葉)を5-3で破ったものの、勝てば選抜が“当確”となる準々決勝で浦和実(埼玉)に0-2と惜敗。大一番で打てなかった悔しさを晴らすため、秋から冬にかけて打力アップをテーマに取り組んできた。「量よりも1本1本、質の高いスイングをテーマに、選抜に出るつもりで練習してきた」と桜井監督。その成果を夏につなげたい思いはナインも同じだ。

「いつまでも引きずっていても意味はない」 県内無敵の3冠で甲子園へ

 23日が17歳の誕生日だった吉田主将は、記念日翌日の“悲報”にも「いつまでも引きずっていても意味はない。“3冠”目指してやるだけです」と言い切った。昨秋に続いて春、夏も県王者の座は譲らない。そのために各自がフィジカル強化に努めている。専門のトレーナーを招き、この冬から週2回のウエートトレーニングを実施。食事も低脂質、高タンパクを心がけ、ささみを積極的に摂取する選手も多いという。161センチの主将も、夕食は米2合をノルマに“食トレ”にも励んで肉体強化を図っている。

 もう1つ、こだわるのが睡眠。ドジャース・大谷翔平投手が睡眠を大事にしているのと同様、吉田主将も「睡眠時間が足りないと集中力に影響する」と少しでも確保しようとしている。チームも冬場は午後11時の消灯時間を同10時にして、より多くの睡眠時間を与えている。

 この日は急遽、自主練習に切り替えた指揮官は「どんな表情で選手たちがグラウンドに出てくるか気にしていたけど、思いのほか前を向いている選手が多かった」と頼もしそうに目を細めた。下を向いていても仕方がない。昨春は茨城大会ベスト4、昨夏が準Vで昨秋がV。着実に聖地に近づいているのは間違いない。吉田主将は夏に目を向け、力強く宣言した。「先輩たちの分まで、いい形で終われるように、悔いなくやっていく」。悔しさをかみしめながら、これまで以上に強化に取り組む春。試練を乗り越えた先に、春夏通じて初となる甲子園出場が待っている。

(尾辻剛 / Gou Otsuji)

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